こんにちは、黒羽です。
今回は、訪問鍼灸マッサージの施術回数についてお話ししたいと思います。
以前、こんな質問をいただいたことがあります。
「黒羽さん、患者さん一人に対して月30回の施術を行うことは可能なんでしょうか?」
つまり、ほぼ毎日、同じ患者さんのところへ訪問して施術をするということですね。
この質問、実は訪問鍼灸マッサージを経営している方にとって、非常に重要なテーマなんです。
なぜなら、施術回数は患者さんの身体状態だけでなく、保険請求や売上、さらには保険者からの審査にも関係してくるからです。
では、結論からお話ししましょう。
月30回の施術は、回数だけを理由に一律に禁止されているわけではありません。
ただし、ここで勘違いしてはいけないことがあります。
それは、
「制度上できること」と「保険請求として適切に認められること」は、まったく別の話だということです。
しかも、2026年7月からは、施術回数に関する非常に重要な制度変更が行われています。
以前のように、単純に「回数制限はないから月30回でも大丈夫」と考えるのは危険です。
今回は、そのあたりを詳しく解説していきたいと思います。
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■ 月30回の施術は不正になるのか?
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まず、最初に押さえておきたいことがあります。
訪問鍼灸マッサージでは、月30回の施術を行ったという事実だけで、直ちに不正請求になるわけではありません。
例えば、患者さんの身体状態が非常に悪く、強い疼痛や関節拘縮、筋緊張などによって日常生活に大きな支障が出ている場合です。
施術を行うことで症状が軽減し、日常生活や介助の負担が改善する。
しかも、その効果が長く続かず、頻回に施術する必要がある。
こうした患者さんであれば、施術頻度を高めることについて検討する余地はあります。
ただし、重要なのは、その必要性を具体的に説明できるかどうかです。
例えば、保険者から、
「なぜ、この患者さんには月30回もの施術が必要なんですか?」
と質問されたとします。
そのとき、あなたは何と答えるでしょうか?
「患者さんが毎日来てほしいと言っているからです」
「施設の職員さんから頼まれたからです」
「医師の同意書をもらっているからです」
こうした説明だけでは、頻回施術の必要性を十分に示せない可能性があります。
なぜなら、医師の同意があることと、毎日施術する必要性があることは、必ずしも同じではないからです。
大切なのは、
「なぜ週2〜3回では足りないのか?」
「毎日施術することで、どのような効果が期待できるのか?」
「その効果をどのように評価しているのか?」
こうしたことを、患者さんの状態や施術記録から説明できることなんです。
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■ 【重要】2026年7月から月16回目以降は50%算定
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そして、今回もっともお伝えしたいのが、この制度変更です。
2026年7月1日から、同一患者に対する同一月の16回目以降の施術について、対象となる料金を50%で算定する仕組みが導入されました。
これは、訪問鍼灸だけでなく、訪問マッサージにも関係します。
具体的には、
【はり・きゅう】
・施術料
・訪問施術料
・電療料
【あん摩・マッサージ・指圧】
・マッサージ料
・訪問施術料
・温罨法などの対象料金
・変形徒手矯正術
これらの対象料金について、月16回目以降は所定料金の50%相当額で算定することになります。
つまり、月30回施術する場合、
1回目から15回目までは通常の算定。
16回目から30回目までは対象料金が50%算定。
ということです。
ここで大切なのは、
月16回以上の施術が禁止されたわけではない
ということです。
施術回数の上限が月15回になったのではありません。
あくまで、月16回目以降の対象料金について、算定額が引き下げられる仕組みなんです。
ただし、経営者としては、これを軽く考えてはいけません。
なぜなら、施術回数を増やしても、以前と同じように売上が増えるとは限らなくなったからです。
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■ 月30回施術しても、売上は30回分にならない?
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例えば、分かりやすく説明するために、1回の施術に係る対象料金が5,000円だったと仮定しましょう。
以前のように30回すべてを5,000円で計算できたとすれば、
5,000円 × 30回 = 150,000円
となります。
しかし、月16回目以降が50%算定になると、
1〜15回目
5,000円 × 15回 = 75,000円
16〜30回目
2,500円 × 15回 = 37,500円
合計112,500円です。
つまり、この単純なモデルでは、同じ30回の施術でも37,500円の差が生まれます。
もちろん、これは制度の仕組みを理解していただくための仮定の計算です。
実際の請求額は、鍼灸かマッサージか、施術内容、訪問施術料の区分、各種算定条件などによって変わります。
しかし、経営上の重要なポイントは変わりません。
施術回数を増やせば、その分だけ売上が比例して増えるという考え方は、見直す必要があるということです。
しかも、訪問施術の場合は移動時間もあります。
患者さんのご自宅まで車で移動し、施術を行い、記録を書き、次の患者さんのところへ移動する。
これだけの時間と労力がかかります。
月16回目以降は対象料金が減額されるわけですから、施術回数だけでなく、時間当たりの収益性も考えなければなりません。
僕が普段からお伝えしているように、一人で自由に稼ぐためには、単純に施術件数を増やせばいいというものではないんですね。
限られた時間の中で、患者さんに必要な施術を提供しながら、経営としても無理のない仕組みを作ることが重要なんです。
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■ 患者さんに減額分を追加請求していいのか?
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ここも勘違いしないでください。
月16回目以降の対象料金が50%算定になるからといって、
「保険からもらえる金額が半分になるので、残りの半分を患者さんに払ってもらおう」
という考え方はできません。
保険療養費として扱う施術については、定められた算定方法と患者負担割合に従う必要があります。
施術者側の収入が減るからといって、その差額を自由に患者さんへ上乗せ請求できるわけではないんです。
この点は、特に注意していただきたいと思います。
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■ そもそも毎日施術する必要があるのか?
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さて、ここからは現場での施術頻度について考えてみましょう。
例えば、週2〜3回の訪問マッサージで、患者さんの疼痛や関節拘縮の状態が安定しているとします。
その患者さんに対して、毎日施術を行う必要があるでしょうか?
もちろん、患者さんの状態によって判断は異なります。
しかし、週2〜3回で十分な効果が得られているのであれば、わざわざ月30回に増やす必要性は慎重に考えるべきでしょう。
反対に、施術後は痛みが軽減するものの、翌日には強い疼痛が戻ってしまう。
その結果、更衣や移乗などの日常生活に大きな支障が出る。
こうしたケースであれば、施術頻度を高めることが患者さんの生活に役立つ可能性もあります。
ただし、その場合でも、施術回数を増やしたことで実際にどのような変化があったのかを確認することが大切です。
例えば、
・疼痛の程度は変化したか
・関節の動きは改善したか
・更衣や移乗がしやすくなったか
・介助するご家族の負担は軽減したか
・施術による疲労や痛みの増悪はないか
こうしたことを評価する必要があります。
そして、もう一つ重要なのが、
いつ施術回数を見直すのか
ということです。
月30回の施術が必要だった患者さんでも、症状が改善すれば、頻度を減らせる可能性があります。
それなのに、最初に月30回と決めたからという理由だけで、何か月も同じ回数を続ける。
これは、適切な運用とは言いにくいですよね。
施術回数は、一度決めたら終わりではありません。
患者さんの状態に応じて、定期的に見直していくことが大切なんです。
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■ 施設から「毎日来てほしい」と言われたら?
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訪問鍼灸マッサージをしていると、施設の職員さんやご家族から、
「できれば毎日来てもらえませんか?」
と言われることもあると思います。
患者さんのことを考えての要望かもしれません。
もちろん、こうした要望に耳を傾けることは大切です。
しかし、施設から頼まれたという理由だけで、毎日施術することが適切になるわけではありません。
僕なら、まず患者さんの状態を確認します。
そして、毎日施術することで、どのような生活上のメリットが期待できるのかを考えます。
例えば、
「現在は週3回の施術を行っていますが、施術後の疼痛軽減がどの程度持続するかを確認したうえで、頻度の変更を検討したいと思います」
といった説明です。
大切なのは、最初から毎日施術することを目的にしないことです。
あくまで患者さんに必要な施術を、必要な頻度で提供する。
これが基本だと思います。
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■ 医師の同意書があれば月30回でも安心?
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これも、よくある勘違いです。
訪問鍼灸マッサージで医療保険を利用する場合、医師の同意は重要な前提になります。
しかし、
医師の同意書があるから、月30回の施術が自動的に認められるわけではありません。
ここはしっかり理解しておきましょう。
例えば、保険者から、
「なぜ月30回の施術が必要なのですか?」
と問い合わせがあったとします。
その際に、
「医師の同意書があります」
という回答だけでは、十分な説明にならない場合があります。
医師の同意を得ることに加えて、施術者自身が患者さんの状態を評価し、施術内容や頻度の必要性を説明できるようにしておくことが重要です。
また、主治医と情報共有を行い、患者さんの状態や施術方針について連携しておくことも大切です。
医師に特定の施術回数を書いてもらえば、それだけで保険請求が保証されるという考え方は避けましょう。
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■ 1年以上・月16回以上の施術には追加書類も
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さらに注意したいのが、長期間にわたって頻回施術を続けるケースです。
初療の日から1年以上経過していて、なおかつ月16回以上の施術を行う場合には、
「1年以上・月16回以上施術継続理由・状態記入書」
という書類が関係してきます。
これは、なぜ長期間にわたって頻回の施術が必要なのかを説明するための書類です。
患者さんの症状や経過、状態の評価、月16回以上の施術が必要な理由などを記載します。
例えば、長期間にわたって月30回の施術を続けているにもかかわらず、
「特に理由はありません」
「ずっとこの回数でやっているので」
という説明では困りますよね。
患者さんの状態がどう変化しているのか。
施術によって、どのような効果が得られているのか。
なぜ、その頻度が必要なのか。
こうしたことを記録しておく必要があります。
また、一定の条件に該当する長期・頻回施術については、保険者から、より詳細な理由や今後の施術計画について確認を求められる仕組みもあります。
場合によっては、受領委任の取扱いにも影響する可能性があります。
つまり、月30回の施術を長期間続ける場合には、単純な減額算定だけでなく、審査や書類対応についても理解しておく必要があるんです。
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■ 施術録には何を書いておけばいいのか?
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では、実際に頻回施術を行う場合、どのような記録を残しておけばよいのでしょうか。
僕がおすすめしたいのは、単に、
「マッサージ実施」
「鍼施術実施」
と書くだけで終わらせないことです。
例えば、
「右膝関節の疼痛が強く、立ち上がり時に介助を要する」
「施術後は疼痛が軽減し、立ち上がり動作が比較的円滑になった」
「翌日の訪問時には疼痛が再び増強していた」
「頻回施術の必要性について、今後も状態を確認しながら再評価する」
こうした内容を、実際に確認した事実に基づいて記録しておくことです。
もちろん、毎回長文を書く必要はありません。
しかし、患者さんの状態や施術による変化が分かるようにしておくことは大切です。
そして、月単位などで状態を振り返り、
「現在の施術頻度は適切なのか?」
を確認する習慣を持つことです。
頻回施術を行う場合ほど、施術録の重要性は高くなると考えています。
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■ ケアマネジャーさんへの説明も工夫しよう
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訪問マッサージの場合、ケアマネジャーさんとの連携も重要ですよね。
もし、患者さんに対して頻回施術を検討するのであれば、単純に、
「毎日マッサージに入ります」
と伝えるのではなく、生活上の目的を説明した方がよいと思います。
例えば、
「現在、関節拘縮と疼痛によって、更衣や移乗に支障が出ています。
施術頻度については、患者さんの状態や主治医の意見、現在利用しているサービスなどを踏まえて検討したいと考えています。
頻回に施術する場合でも、効果や身体への負担を確認し、一定期間後に施術回数を見直す予定です」
こうした説明です。
これなら、なぜ施術を行うのかという目的が伝わりますよね。
訪問リハビリや訪問看護、デイサービスなどを利用している患者さんであれば、他のサービスとの調整も大切です。
同じような内容のケアが重なっていないか。
患者さんの身体に過度な負担がかかっていないか。
そうしたことも確認しながら、適切な施術計画を考えていく必要があります。
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■ 経営者として考えてほしいこと
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さて、ここからは少し経営のお話をします。
僕は以前から、一人で訪問鍼灸マッサージを経営するのであれば、単純に施術件数を増やすことだけを目標にしない方がいいとお伝えしています。
なぜなら、僕自身が目指しているのは、
誰も雇わず、一人で自由な時間を持ちながら、必要な収入を得る働き方
だからです。
もちろん、売上は大切です。
生活していくためには、お金を稼ぐ必要があります。
しかし、毎日朝から晩まで施術に追われ、休む時間もなく働き続ける。
これでは、せっかく独立した意味が薄れてしまいますよね。
今回の月16回目以降の減額算定についても、同じことが言えます。
仮に、一人の患者さんに月30回施術していたとします。
当然、30回分の時間と労力が必要です。
しかし、16回目以降は対象料金が50%算定になります。
つまり、時間を使って施術しても、以前ほどの収益が得られない場合があるわけです。
だからこそ、これからの訪問鍼灸マッサージ経営では、
「いかに施術回数を増やすか」
だけではなく、
「患者さんに必要な施術を、どのような頻度で提供するか」
「限られた時間で、どうやって無理のない経営をするか」
という視点がますます重要になってくると思います。
ただし、ここで誤解してほしくないことがあります。
減額されるからという理由だけで、患者さんに必要な施術を減らせばよいという話ではありません。
あくまで患者さんの状態と施術の必要性が優先です。
そのうえで、制度に沿った適切な請求と、無理のない経営を両立させることが大切なんですね。
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■ 最後に、黒羽からお伝えしたいこと
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今回は、月30回の訪問鍼灸マッサージについてお話ししました。
改めて、重要なポイントを整理しておきましょう。
まず、月30回の施術を行ったという理由だけで、一律に不正請求になるわけではありません。
しかし、頻回施術を行うのであれば、その必要性を患者さんの状態や施術効果から説明できることが重要です。
そして、2026年7月からは、月16回目以降の対象料金について50%算定が導入されています。
さらに、初療から1年以上経過し、月16回以上の施術を継続する場合には、追加書類などの対応も必要になります。
つまり、これからは、
「医師の同意書があるから大丈夫」
「患者さんが希望しているから大丈夫」
「回数制限がないから何回でも大丈夫」
という考え方だけでは不十分なんです。
大切なのは、患者さんに必要な施術を提供し、その理由をきちんと説明できること。
そして、制度変更に対応しながら、適切な保険請求を行うことです。
訪問鍼灸マッサージは、患者さんの生活を支える大切な仕事です。
だからこそ、患者さんにとって必要な施術を、適切な形で継続できる経営を目指したいですよね。
僕自身、これからも制度変更には注意しながら、一人で自由に働くための訪問鍼灸マッサージ経営について情報発信していきたいと思います。
ぜひ、今回の内容を参考に、ご自身の施術回数や施術計画を見直してみてください。