こんにちは、黒羽です!
今日は、訪問鍼灸・訪問マッサージを経営している方にとって、非常に重要なお話をしたいと思います。
それが、
「なぜ患者さんは施術をやめてしまうのか?」
という問題です。
訪問鍼灸マッサージの仕事をしていると、患者さんから突然、
「先生、来月から施術をお休みしたいんです」
「家族と相談して、いったんやめることにしました」
「しばらく様子を見ようと思います」
などと言われることがあります。
こういう経験、ありませんか?
せっかく営業して獲得した患者さん。
医師の同意書を取得して、ようやく施術を開始できた患者さん。
それなのに、数か月で終了してしまう。
経営者としては、なかなか厳しいものがありますよね。
では、なぜ患者さんは離れていくのでしょうか?
施術が下手だからでしょうか?
効果が出ていないからでしょうか?
もちろん、そういった理由も考えられます。
しかし、僕は訪問鍼灸マッサージの仕事を15年以上続けてきて、患者さんが施術を終了する理由は、もっと複雑だと感じています。
そして、ここで重要なのは、
「患者さんがやめた理由」と「事業者側が改善できる問題」は、必ずしも同じではない
ということです。
今日はこの点について、詳しくお話ししたいと思います。
【患者さんが離れる理由は、大きく2つに分かれる】
まず、患者さんが施術を終了する理由は、大きく2つに整理できます。
1つ目は、
「継続したくても、継続できなくなった」
というケースです。
例えば、
・入院してしまった
・施設に入所することになった
・遠方へ引っ越すことになった
・体調が大きく変化した
・患者さんが亡くなられた
・経済的な事情で継続が難しくなった
こういった理由です。
特に訪問鍼灸マッサージでは、高齢の患者さんや身体に障害のある患者さんを対象とすることが多いため、入院や施設入所などによる終了は避けられない場合があります。
これは、施術者がどれだけ頑張っても防げないことがあります。
一方、2つ目は、
「継続する意味を感じなくなった」
というケースです。
こちらは少し事情が違います。
例えば、
「何か月も受けているけど、何が変わったのか分からない」
「毎回同じことをしているだけに感じる」
「先生との相性があまり良くない」
「家族が施術を続ける必要性を感じていない」
「費用を払ってまで続ける意味があるのかな?」
こういった理由です。
もちろん、これらがすべての患者さんに当てはまるわけではありません。
ただし、事業者として見直す余地があるのは、主にこちらのケースです。
つまり、
「施術を継続する必要性や意味が、患者さんとご家族に十分伝わっているか?」
という問題なのです。
【原因① 施術の効果や意味が伝わっていない】
まず、最初に考えたいのがこれです。
訪問鍼灸マッサージでは、患者さんによって施術の目的が違います。
痛みの軽減を目指す方。
関節の動かしにくさに対応する方。
筋緊張の緩和を目指す方。
身体機能の維持を目標にする方。
日常生活の負担を少しでも減らしたい方。
さまざまです。
しかし、ここで問題があります。
施術者が考えている目的と、患者さんが期待していることが一致していない場合があるのです。
例えば、施術者は、
「関節の動きを維持することが重要だ」
と考えている。
ところが患者さんは、
「施術を受ければ、また以前のように歩けるようになるかもしれない」
と期待している。
このような状態で何か月も施術を続けたら、どうなるでしょうか?
患者さんは、
「全然歩けるようにならないじゃないか」
と感じるかもしれません。
一方、施術者は、
「関節の状態は大きく悪化していないから、一定の目標は達成できている」
と考えているかもしれません。
つまり、
お互いに見ている目標が違うわけです。
これでは、施術者が一生懸命取り組んでいても、患者さんの満足につながらないことがあります。
だからこそ、施術を開始する段階で、
「何を目標にするのか」
「どのような変化が期待できるのか」
「何が難しいのか」
を説明しておく必要があります。
もちろん、改善や維持を保証することはできません。
それでも、施術の目的を共有しておくだけで、患者さんの受け止め方は変わってくると思います。
【原因② 毎回同じ施術で、変化が分からない】
これは訪問施術で注意したいところです。
毎週2回、あるいは3回。
同じ曜日、同じ時間に訪問する。
そして毎回、同じような施術を行う。
もちろん、患者さんの状態によっては、継続的に同じ部位へ施術することが適切な場合もあります。
毎回違う施術をすればいいという話ではありません。
しかし、患者さんやご家族からすると、
「毎回同じことをしているけど、何のために続けているんだろう?」
と感じる可能性があります。
そこで大切なのが、
施術内容を変えることよりも、身体状態や生活上の変化を共有することです。
例えば、
「以前より肩周囲の筋緊張が和らいでいるように感じますね」
「今日は膝の動かしにくさが少し強いので、状態を確認しながら進めますね」
「最近、ベッドから起き上がるときの負担はいかがですか?」
「ご家族から見て、着替えの介助に変化はありますか?」
このように、患者さんの状態を一緒に確認する。
そして、確認できたことを分かりやすく説明する。
これは非常に重要です。
ただし、変化がないのに無理やり効果が出ているように説明する必要はありません。
変化が乏しいのであれば、その事実を踏まえて目標や施術方針を見直すことも大切です。
患者さんが知りたいのは、施術者が何をしたかだけではありません。
自分の身体や生活にとって、どのような意味があるのか。
ここなのです。
【原因③ 施術者との相性や接遇の問題】
次に、施術者との相性です。
僕は、訪問鍼灸マッサージでは、施術技術と同じくらい接遇やコミュニケーションが重要だと考えています。
なぜなら、僕たちは患者さんの自宅にお邪魔する仕事だからです。
一般的な治療院とは違います。
患者さんにとって自宅は、生活の場所です。
そこへ毎週、施術者が訪問するわけです。
だから、
・挨拶ができるか
・清潔感があるか
・時間を守るか
・患者さんの話を聞くか
・言葉遣いが丁寧か
・家族への配慮があるか
・室内の物を丁寧に扱うか
・プライバシーを尊重するか
こうしたことが非常に重要になります。
例えば、施術技術が高くても、
患者さんの話を聞かない。
毎回、自分の話ばかりする。
家族に対して横柄な態度を取る。
約束の時間に遅れても連絡しない。
こういう施術者だったら、どうでしょうか?
患者さんは毎回その人を自宅に迎えなければなりません。
それだけで負担になることがあります。
逆に、技術面で適切な水準を満たしていることを前提として、
いつも丁寧に挨拶する。
患者さんの話を聞く。
小さな変化に気づく。
ご家族にも気を配る。
そういった施術者であれば、安心して訪問を受け入れてもらいやすくなります。
ただし、接遇が良ければ施術の質が低くてもいいということではありません。
必要な施術の質と、安心できる対応。
両方が大切です。
【原因④ 患者さんではなく、家族が負担を感じている】
ここも訪問施術ならではの問題です。
患者さん本人は、
「先生に来てもらいたい」
と思っている。
ところが、ご家族は、
「毎週何回も人が来るのは大変」
と感じていることがあります。
例えば、
訪問前に部屋を片づけなければならない。
施術中に家族が同席している。
他の介護サービスとの時間調整が必要。
毎月の自己負担が気になる。
患者さん本人は満足していても、ご家族に負担がかかっている。
この状態が続くと、ある日突然、
「家族と相談して、施術をやめることにしました」
となる可能性があります。
だからこそ、患者さん本人だけでなく、ご家族の負担にも目を向ける必要があります。
ただし、ご家族に負担があるからといって、本人の希望を軽視していいわけではありません。
本人と家族の意向が違う場合には、それぞれの希望を丁寧に確認することが大切です。
訪問施術は、患者さんの身体だけでなく、その人の生活の中で行われるサービスです。
この視点を忘れないようにしたいですね。
【原因⑤ 費用に対する納得感がない】
訪問鍼灸マッサージは、医師の同意など所定の要件を満たす場合、医療保険の療養費として取り扱われます。
そのため、患者さんの自己負担割合によっては、比較的少ない負担で利用できる場合があります。
しかし、
自己負担が少ないからといって、患者さんが費用を気にしないわけではありません。
例えば、1回400円の自己負担だと仮定しましょう。
週3回利用すれば、月12回で4,800円です。
年間では57,600円になります。
もちろん、これは説明のための仮定であり、実際の料金は施術内容や算定条件などによって異なります。
それでも、患者さんによっては決して小さな金額ではありません。
そして、ここで大切なのが、
費用そのものの問題と、費用に対する納得感の問題を分けて考えることです。
本当に家計が厳しくて続けられない方もいます。
その場合、無理に継続を勧めるべきではありません。
一方で、
「毎月お金を払っているけど、何のために続けているのか分からない」
という方もいるかもしれません。
その場合は、施術の目的や経過が十分に伝わっていなかった可能性があります。
ただし、
「費用が高いと言っているけど、本当は効果に不満があるんだろう」
と勝手に決めつけてはいけません。
患者さんの言葉を尊重しながら、必要に応じて確認する。
この姿勢が大切です。
【原因⑥ 他のサービスとの兼ね合い】
訪問鍼灸マッサージの患者さんは、ほかにもさまざまなサービスを利用している場合があります。
訪問看護。
訪問リハビリ。
訪問介護。
デイサービス。
通所リハビリ。
ショートステイ。
こうしたサービスが増えてくると、患者さんの一週間の予定がかなり埋まってしまうことがあります。
そこへ訪問マッサージが週2回、3回と入る。
すると、
「もう少し自由な時間が欲しい」
「デイサービスの日を増やしたい」
「家族の都合で時間が合わない」
という問題が出てくることがあります。
これは、必ずしも施術に不満があるという意味ではありません。
生活全体の中で、サービスの優先順位が変わったということです。
こうした場合には、本人の希望や身体状態、医師の同意内容などを踏まえて、訪問日程や施術の必要性を見直すことも考えられます。
大切なのは、
訪問マッサージを続けてもらうことだけを目的にしないこと。
利用者さんの生活全体を考えることです。
【「表向きの理由」と「本当の理由」は違うことがある】
さて、ここまで6つの原因をお話ししました。
ここで、もう一つ重要なことがあります。
それが、
患者さんが伝えてくれた終了理由だけでは、改善点が十分に分からない場合がある
ということです。
例えば、
「費用が負担なのでやめます」
と言われたとします。
本当に費用が負担なのかもしれません。
あるいは、施術の必要性が十分に伝わっていなかった可能性もあります。
また、
「日程が合わなくなったのでやめます」
と言われた場合も同じです。
本当に日程が合わないのかもしれません。
他のサービスを優先したいのかもしれません。
あるいは、訪問そのものが生活上の負担になっていた可能性もあります。
ただし、ここで注意してほしいのは、
患者さんの言葉を疑うことが目的ではない
ということです。
「本当は別の理由があるんでしょう?」
などと問い詰めてはいけません。
大切なのは、終了の意思を尊重したうえで、今後の改善に役立つことがあれば教えていただくことです。
例えば、僕ならこう聞きます。
「分かりました。これまで施術を受けていただき、ありがとうございました。今後の参考にしたいので、差し支えなければ、施術内容や訪問時間などで気になる点がなかったか教えていただけますか?」
このくらいで十分だと思います。
答えたくない方に、無理に聞く必要はありません。
【患者さんがやめた理由を記録していますか?】
ここからは経営の話です。
訪問鍼灸マッサージを経営している方に質問です。
患者さんが施術を終了したとき、その理由を記録していますか?
例えば、毎月患者さんが3人増えているとします。
しかし、同時に3人が終了している。
これでは患者数は増えません。
営業を頑張って新規患者さんを獲得しても、既存患者さんが同じくらい減っていれば、経営は安定しにくくなります。
ただし、ここで重要なのは、単純に終了人数だけを見ないことです。
例えば、同じ3人の終了でも、
Aさんは入院。
Bさんは転居。
Cさんは施術内容への不満。
という場合と、
3人とも施術への不満で終了した場合では、事業者として見直すべき内容がまったく違います。
だからこそ、患者さんが終了した理由を記録しておく必要があります。
僕なら、最低限、次のように分類します。
① 入院・施設入所・転居などによる終了
② 目標達成や必要性の変化による終了
③ 費用や日程などの負担による終了
④ 施術内容や対応への不満による終了
⑤ 理由が確認できなかった終了
もちろん、複数の理由が重なることもあります。
その場合は、患者さんやご家族が話された内容を、そのまま記録しておくといいでしょう。
こうしておけば、
「最近、費用を理由に終了する方が増えている」
「施術者が変わった後に終了が続いている」
「訪問時間の調整が難しくなっている」
といった傾向に気づけるかもしれません。
ただし、全国的にどの理由が最も多いのかについて、ここで断定できる統計があるわけではありません。
大切なのは、
自分の事業所で何が起きているのかを把握することです。
【患者さんが離れないために、僕ならこの3つを実践する】
では、具体的に何をすればいいのでしょうか?
僕なら、まず次の3つを重視します。
① 施術開始時に目標を共有する
施術開始時に、
「今、一番困っていることは何ですか?」
「施術を受けることで、どのようなことを期待していますか?」
と確認します。
そして、施術者として考える目標を説明します。
患者さんが期待していることと、施術者が目指すことに違いがあれば、最初に整理しておきます。
② 定期的に身体状態と生活の変化を確認する
毎回施術をして終わりではなく、
「最近、生活の中で困っていることは変わりましたか?」
「以前と比べて、身体の動かしにくさはいかがですか?」
「施術について気になることはありませんか?」
と確認します。
変化があれば共有する。
変化が乏しければ、その理由や今後の方針を検討する。
必要に応じて医師や関係職種とも連携する。
これを続けます。
③ 家族やケアマネジャーとも必要な情報を共有する
患者さん本人だけでなく、ご家族やケアマネジャーとの連携も重要です。
もちろん、情報共有は本人の同意や必要な範囲に配慮して行います。
例えば、
「最近、移乗時の介助量に変化はありますか?」
「ご家族の負担が増えていませんか?」
「ほかのサービスとの日程調整で困っていませんか?」
といったことです。
訪問施術は、施術者と患者さんだけで完結する仕事ではありません。
生活全体を見ながら関係者と連携することが大切です。
【すべての患者さんを引き止める必要はない】
最後に、これはぜひ覚えておいてほしいことです。
患者さんが施術を終了することは、必ずしも悪いことではありません。
例えば、当初の目標を達成した。
身体状態や生活環境が変わり、施術の必要性が低くなった。
別のサービスを優先した方がよい状況になった。
こうした場合には、終了することが適切な場合もあります。
また、入院や転居など、施術者の努力ではどうにもならないこともあります。
だから、
「患者さんが一人減った。失敗だ」
と考える必要はありません。
大切なのは、
「なぜ終了したのか?」
を理解することです。
そして、改善できることがあれば改善する。
改善できない事情であれば、無理に引き止めない。
必要性がなくなったのであれば、適切に終了する。
これが医療・介護に関わる事業者として大切な姿勢だと思います。
【黒羽のひとこと:新規患者を増やす前に、今いる患者さんを見直そう】
訪問鍼灸マッサージの経営では、どうしても新規患者さんの獲得に目が向きます。
ケアマネ営業をする。
施設営業をする。
医療機関へ挨拶に行く。
チラシを配る。
ホームページを作る。
もちろん、こうした活動は必要です。
僕も営業の重要性は何度もお伝えしてきました。
しかし、どれだけ新規患者さんを獲得しても、既存患者さんが次々と離れてしまえば、なかなか患者数は増えません。
例えば、
毎月5人の新規患者さんを獲得しても、4人が終了してしまえば、純増は1人です。
一方、毎月3人の新規患者さんでも、終了が1人なら、純増は2人です。
もちろん、終了理由や患者さんの必要性を無視して、単純に継続人数だけを増やせばいいという話ではありません。
それでも、経営上、終了理由を把握することには大きな意味があります。
そして僕が特に重要だと思うのは、
「施術の技術を磨けば、患者さんは離れない」
と考えないことです。
もちろん、施術技術は大切です。
適切な評価、安全性、必要な技術水準は欠かせません。
しかし、それだけでは十分ではありません。
患者さんの話を聞く。
ご家族に配慮する。
施術の目的を説明する。
身体状態や生活の変化を共有する。
費用や訪問時間の負担を確認する。
ケアマネジャーや他職種と連携する。
こうしたことも、患者さんが安心して施術を受け続けられる環境を整えるために重要なのです。
患者さんが求めているのは、単にマッサージを受けることだけではありません。
自分の身体や生活の困りごとに向き合ってもらい、納得したうえで必要な施術を受けられることです。
だからこそ、僕たち施術者は、
「今日も施術をしたから仕事は終わり」
ではなく、
「この患者さんは、今の施術に何を期待しているのか?」
「その期待と、実際の施術目標は合っているのか?」
「本人や家族は、継続する意味を理解しているのか?」
ということを、ときどき確認する必要があります。
そして、もう一つ。
患者さんが離れてしまったときこそ、経営を見直すチャンスです。
その終了は避けられなかったのか。
何か改善できることがあったのか。
説明が不足していなかったか。
接遇に問題はなかったか。
家族の負担を見落としていなかったか。
こうしたことを振り返るだけでも、次の患者さんへの対応は変わってくるはずです。
新規患者さんを獲得することも大切。
しかし、
今いる患者さんが、納得して施術を受けられているかを確認することも同じくらい大切です。
そして、必要性がある間は安心して継続でき、必要性がなくなれば適切に終了できる。
僕は、そんな訪問鍼灸マッサージ事業所こそ、長く信頼されるのではないかと思っています。
ぜひ一度、最近施術を終了した患者さんの理由を振り返ってみてください。
そこに、あなたの事業所が改善できるヒントが隠れているかもしれません。