こんにちは、黒羽です。
今日は、訪問鍼灸・訪問マッサージを行っている治療家なら、ぜひ知っておいてほしい話をします。
それが、
「医師同意書の発行料」
についてです。
訪問鍼灸・訪問マッサージを医療保険の療養費として取り扱う場合、原則として医師の同意が必要になります。
そのため、患者さんには医療機関を受診していただき、同意書を発行してもらうことがあります。
ところが、この同意書の発行料について、医療機関側と施術者側で認識が異なるケースがあります。
例えば、
「同意書の発行料は3,000円です」
「うちの病院では5,000円いただいています」
と言われたら、あなたはどうしますか?
「病院が決めた料金だから仕方ない」
と思うかもしれません。
しかし、ここには確認しておくべき診療報酬上のルールがあります。
今回は、この仕組みを分かりやすく解説します。
【医師同意書の交付料は100点】
まず、基本となる制度から説明します。
鍼灸・あん摩マッサージ指圧の療養費に係る同意書については、医科診療報酬点数表に、
「B013 療養費同意書交付料 100点」
という項目があります。
診療報酬は原則として1点10円ですから、
100点=1,000円
という計算になります。
ただし、ここで注意してください。
この1,000円というのは、診療報酬上の総額です。
患者さんが窓口で必ず1,000円支払うという意味ではありません。
通常の保険診療で、交付料100点の部分だけを考えると、
1割負担なら100円。
2割負担なら200円。
3割負担なら300円。
という計算になります。
もちろん、実際には診察料などが別途算定される場合があります。
したがって、
「同意書を発行してもらったら、窓口では必ず100円です」
などと説明してはいけません。
重要なのは、
「交付料100点」と「患者さんが窓口で支払う金額」は違う
ということです。
【診断書なら自由料金、同意書なら100点?】
ここは特に間違えやすいところです。
一般的に、診断書というと、医療機関が自費の文書料を設定しているイメージがあります。
例えば、勤務先などへ提出する一般的な診断書では、自費の文書料が設定されることがあります。
しかし、
「診断書という名前だから自費で自由に料金を設定できる」
とは限りません。
実は、鍼灸・あん摩マッサージ指圧の療養費に係る文書については、算定要件を満たせば、同意書だけでなく診断書も「療養費同意書交付料」の対象に含まれます。
つまり、重要なのは文書の名前だけではありません。
何の目的で発行する文書なのか。
診療報酬上、どのような取扱いになるのか。
ここを確認する必要があります。
ですから、医療機関から、
「これは診断書なので5,000円です」
と言われた場合でも、すぐに正しいとも間違っているとも判断できません。
まず、その文書が何のために交付されるものなのかを確認することが大切です。
【3,000円や5,000円を請求されたらどうする?】
ここからが実務上の話です。
例えば、患者さんから、
「先生、病院で同意書を書いてもらったら5,000円かかりました」
と言われたとします。
そのときに、
「それは違反ですよ!」
「病院が間違っています!」
と、いきなり決めつけるのは避けた方がいいです。
なぜなら、実際の請求内容を確認しないと判断できないからです。
確認したいのは、
・療養費に係る通常の同意書の交付なのか
・診察料などを含めた会計総額なのか
・自費の文書料として請求されているのか
・紛失による再発行など、通常とは異なる事情があるのか
といった点です。
特に、診察料などを含めた会計総額が3,000円だったからといって、それだけで不適切な請求とは言えません。
一方、通常の療養費同意書の交付について、交付料とは別に高額な自費文書料を請求しているような場合には、取扱いを確認する必要があります。
金額だけで判断せず、請求の中身を確認する。
これが基本です。
【同意書の紛失による再発行は取扱いが違う】
もう一つ知っておきたいことがあります。
それが、
「紛失による再発行」
です。
例えば、患者さんが同意書を発行してもらったものの、紛失してしまったとします。
そこで、もう一度同じ文書を発行してもらう場合には、通常の初回交付とは異なる取扱いになることがあります。
公的な取扱資料では、紛失による再発行の費用を患者負担とすることが示されています。
一方、施術継続のための再同意に伴う交付については、所定の要件を満たせば、療養費同意書交付料を算定できる場合があります。
つまり、
「初回交付」
「継続のための再同意」
「紛失による再発行」
は、同じものとして考えない方がいいということです。
「同意書は何があっても100点」
という説明も正確ではありません。
【不適切な請求があったら、どうなるのか?】
ここで気になるのが、
「もし医療機関が間違った料金を請求していたら、どうなるのか?」
という問題です。
当然、請求内容によっては確認や是正が必要になる可能性があります。
ただし、
「必ず過去数年分の保険請求を返還する」
「その病院では今後同意書を発行できなくなる」
といったことを、一律のルールとして説明するのは適切ではありません。
患者さんから徴収した文書料の問題なのか。
医療機関の診療報酬請求の問題なのか。
施術者側の療養費請求の問題なのか。
それぞれ別の問題だからです。
実際にどのような対応が必要になるかは、請求内容や具体的な事情によって異なります。
ですから、何か疑問があれば、まず事実関係を整理することが重要です。
【医療機関との関係を悪くしないことも大切】
ここは僕が特に伝えたいところです。
訪問鍼灸・訪問マッサージの仕事は、医師との連携が非常に重要です。
同意書の発行料について疑問があるからといって、いきなり医療機関に強い口調で指摘する必要はありません。
例えば、
「先生、今回の同意書について確認したいことがあります。鍼灸・マッサージの療養費に係る同意書は、診療報酬上100点という項目があると理解しているのですが、今回の料金はどのような取扱いになるのでしょうか?」
と、丁寧に確認すればいいのです。
場合によっては、医師ではなく受付や医事課の方が料金の取扱いを確認してくれるかもしれません。
必要であれば、厚生労働省の点数表や算定上の留意事項を共有するのも一つの方法です。
ただし、100点という数字だけを見せるのではなく、算定対象や条件、例外も含めて確認することが大切です。
制度を正しく理解することと、相手を責めることは別です。
僕たちの目的は、医療機関の間違いを探すことではありません。
患者さんが適切な取扱いのもとで、安心して施術を受けられるようにすることです。
【患者さんへの説明にも気をつけたい】
もう一つ注意してほしいのが、患者さんへの事前説明です。
例えば、
「同意書は100円で発行してもらえますよ」
と説明してしまう。
ところが、実際に病院へ行ったら、診察料なども含めてもっと費用がかかった。
そうなると、
「先生、100円って言っていたじゃないですか」
というトラブルになりかねません。
だから僕なら、
「同意書の交付には診療報酬上の決まりがありますが、実際の窓口負担は保険の負担割合や診察内容などによって変わります。詳しい金額は受診先の医療機関で確認してください」
と説明します。
最初から誤解のない説明をしておく。
これも患者さんとの信頼関係を守るために大切なことです。
【黒羽のひとこと:制度を知っているだけでは足りない】
今回の話は、同意書発行料という少し細かい制度の話でした。
しかし、僕が本当に伝えたいのは、
「制度を正しく理解したうえで、患者さんと医療機関の間に立って丁寧に対応すること」
です。
訪問鍼灸・訪問マッサージの仕事では、施術技術だけが重要なのではありません。
医師との連携。
ケアマネジャーとの連携。
患者さんやご家族への説明。
必要書類の管理。
保険制度の理解。
こうした部分も非常に重要です。
例えば、患者さんから同意書の費用について質問されたとき、
「病院が決めることなので分かりません」
で終わる人と、
「診療報酬上の取扱いがありますので、まず請求内容を確認してみましょう」
と言える人。
どちらが安心してもらえるでしょうか?
僕は、後者だと思います。
もちろん、施術者が医療機関の請求を最終判断する立場ではありません。
分からないことがあれば、医療機関や関係する保険者、地方厚生局などに確認する必要があります。
それでも、
制度を知っているかどうかで、患者さんへの対応は大きく変わります。
そして、こうした小さな対応の積み重ねが、医師やケアマネジャー、患者さんからの信頼につながっていくのだと思います。
訪問施術の仕事は、単に患者さんの自宅へ行って施術するだけの仕事ではありません。
施術を安心して受けられる環境を整えることも、僕たちの大切な役割です。
今回の内容を参考に、同意書発行料についても一度確認してみてください。