こんにちは、黒羽です。
今日は、
少し厳しいテーマについて書きたいと思います。
「スタッフを切ることは、本当に悪いことなのか?」
という話です。
もちろん、
気に入らないから辞めさせるとか、
経営者の気分で人を切るとか、
そういう話ではありません。
経営が厳しくなったとき。
複数の事業を抱えて回らなくなったとき。
このまま全員を抱えていたら会社そのものが危なくなるとき。
経営者は、
どこかで厳しい決断をしなければならないことがあります。
僕自身、
過去にそれを経験しました。
■昔の僕は、いろいろな事業をやっていました
以前の僕は、
今とはまったく違う経営をしていました。
整骨院。
デイサービス。
リラクゼーション。
訪問鍼灸・訪問マッサージ。
いろいろな事業に手を出して、
スタッフも何人も雇っていました。
当時は、
事業を増やすことが成長だと思っていた部分もあります。
売上を増やす。
店舗を作る。
人を雇う。
また新しい事業を始める。
外から見れば、
事業が大きくなっているように見えます。
でも、
実際にやってみると、
そんなに単純ではありませんでした。
■人が増えると、売上だけではなく「問題」も増える
スタッフを一人雇えば、
当然、人件費が発生します。
でも、
増えるのは人件費だけではありません。
採用。
教育。
シフト管理。
人間関係。
ミスへの対応。
急な欠勤。
退職。
引き継ぎ。
いろいろなことが起きます。
もちろん、
子どもが熱を出したら休まなければならないこともあります。
これは仕方ありません。
誰が悪いわけでもありません。
でも、
経営者からすると、
誰かが急に休んだら、
その穴を誰かが埋めなければいけません。
最終的に、
その穴を埋めるのは経営者になることも多い。
スタッフが増えれば、
こうしたことが同時多発的に起こるようになります。
■「自分の会社」と「勤めている会社」では意識が違う
これは、
僕が実際にスタッフを雇って感じたことです。
たとえば、
「エアコンのフィルターを掃除しておいて」
とお願いする。
すると、
なぜそうなったのか分かりませんが、
フィルターを壊してしまう。
もちろん、
単純なミスだったのだと思います。
でも僕は、
こういう小さな出来事の積み重ねから、
経営者と雇用される側では、
どうしても意識に差が出ることがあると感じました。
自分で買ったエアコンなら、
「壊したら自分がお金を払わないといけない」
と思うので慎重に扱います。
会社のものになると、
そこまで強く意識しない人もいます。
これは全員がそうだと言っているわけではありません。
自分の会社のように大切に扱ってくれるスタッフもいます。
ものすごく責任感の強い人もいます。
だから、
これは人によります。
ただ、
経営者と従業員では、背負っているものが違う。
これは、
僕自身が人を雇って初めて分かったことでした。
■さらに、整骨院の経営環境も厳しくなっていった
そんな中、
整骨院を取り巻く保険の環境も、
僕にとってだんだん厳しいものになっていきました。
僕自身、
個別指導を経験しています。
これはかなり精神的にきつかったです。
何とか対応しましたが、
僕の中では、
「もう保険に依存した経営はしたくない」
という気持ちが強くなりました。
そこで、
整骨院を完全自費へ移行する決断をしました。
ただ、
今振り返れば、
やり方はかなり極端だったと思います。
普通なら、
保険中心から自費中心へ、
時間をかけて少しずつ移行する方法もあったでしょう。
でも当時の僕は、
個別指導を経験したことで、
保険そのものにかなり嫌気が差していました。
だから、
一気に自費へ移行しました。
当然、
どうなったか。
患者さんは大きく減りました。
今まで比較的低い自己負担で施術を受けていた患者さんに、
「これからは自費です」
となれば、
離れる人が出るのは当然です。
売上は落ちました。
経営も苦しくなりました。
■デイサービスにも手を出した。でも3か月で撤退した
その頃、
僕はデイサービスもやっていました。
リラクゼーションもある。
整骨院もある。
訪問もある。
そして、
それぞれにスタッフがいる。
今思えば、
完全に自分の力が分散していました。
一つ問題が起きる。
そちらを対応している間に、
別のところで問題が起きる。
それを処理していると、
今度はスタッフの問題が出てくる。
もう、
てんやわんやです。
結局、
デイサービスは3か月程度で撤退しました。
ここで僕は、
初めて大きなことに気づきました。
事業を増やせば増やすほど、必ず強くなるわけではない。
むしろ、
自分の能力を超えて広げてしまうと、
力が分散するんです。
■多角化が悪いわけではない。僕に向いていなかった
ここは、
誤解してほしくありません。
いくつもの事業を経営して、
何十人、何百人というスタッフをマネジメントできる人もいます。
良い幹部に恵まれる人もいます。
仕組み化がうまい人もいます。
人を育てることが得意な経営者もいます。
そういう人なら、
事業を大きくすることが向いていると思います。
でも、
僕には向いていませんでした。
これを認めるまで、
結構時間がかかりました。
経営者って、
事業を縮小することに抵抗があるんですよ。
売上が下がる。
スタッフ数が減る。
店舗が減る。
外から見ると、
「事業が小さくなった」
ように見える。
だから、
なかなか決断できません。
でも、
大切なのは、
外からどう見えるかではありません。
最終的に会社に利益が残るのか。
ここです。
■そこで残ったのが、訪問鍼灸・訪問マッサージだった
いろいろな事業をやって、
僕が改めて数字を見たとき、
一つ気づいたことがありました。
訪問鍼灸・訪問マッサージだけは、
比較的安定していたんです。
大きな店舗が必要ない。
大量の在庫も必要ない。
固定費を抑えやすい。
一人でもできる。
患者さんが継続してくれれば、
収入も比較的読みやすい。
そして、
他の事業に比べて、
僕自身が管理しやすかった。
そこで、
僕は考えました。
「もう全部やめて、訪問鍼灸・訪問マッサージ一本でいいんじゃないか?」
今なら簡単に言えます。
でも、
当時は相当悩みました。
■事業を整理するということは、人の問題が出てくる
事業をやめる。
店舗を縮小する。
言葉だけなら簡単です。
でも、
そこで働いている人がいます。
事業がなくなれば、
当然、
そこで働いていたスタッフの雇用をどうするのかという問題が出てきます。
僕も、
そこはかなり悩みました。
反発もありました。
当然だと思います。
働いている側からすれば、
生活があります。
突然、
「事業を縮小します」
と言われれば、
納得できない人もいるでしょう。
でも、
経営者側にも、
会社を存続させる責任があります。
赤字の事業を抱え続け、
人件費を払い続け、
最後に会社そのものが倒れてしまったら、
どうなるでしょうか。
結局、
もっと多くの人に影響が出ます。
だから、
経営者には、
ときとして、
「何を残して、何をやめるのか」
という判断が必要になります。
■ただし「経営が苦しいから自由に解雇できる」わけではない
ここは、
非常に重要なので書いておきます。
僕が言っているのは、
「会社の利益のためなら、好きなようにスタッフを解雇していい」
という話ではありません。
日本では、
解雇にはルールがあります。
特に、
経営上の理由による整理解雇については、
人員削減の必要性だけではなく、
解雇を回避するための努力をしたのか、
対象者の選び方に合理性があるのか、
本人への説明など適切な手続きを取ったのか、
といった事情を踏まえて厳しく判断されます。
だから、
「売上が落ちた。じゃあ明日から来なくていい」
という話ではありません。
事業縮小や人員整理を考えるなら、
配置転換など他の方法がないのかも含め、
社会保険労務士や弁護士などへ相談しながら、
適切な手順を踏む必要があります。
僕が今日言いたい「切る」というのは、
法律を無視して解雇するという意味ではありません。
経営者として、赤字事業や過剰な固定費を放置しないという意味です。
■「全員を守ろう」として、全員で沈んだら意味がない
経営者は、
どうしても情が入ります。
長く働いてくれた。
頑張ってくれた。
家族もいる。
できれば辞めてもらいたくない。
当然です。
僕だって、
人を辞めさせることを楽しいと思ったことなんてありません。
できれば、
そんな判断はしたくありません。
でも、
経営数字が悪化しているのに、
何も決めない。
赤字事業も続ける。
固定費もそのまま。
人件費もそのまま。
「いつか良くなるだろう」
と先送りする。
これも、
僕は経営者として問題だと思っています。
船に穴が開いているのに、
誰にも嫌われたくないから、
穴を塞ぐ決断をしない。
それでは、
最後は船そのものが沈みます。
■大企業でも、経営再建では「削る」という判断をする
これは、
小さな治療院だけの話ではありません。
たとえば日産自動車は、
2025年に発表した経営再建計画「Re」で、
2026年度までの業績回復を目指し、
固定費・変動費の削減や人員削減、生産拠点の再編などを打ち出しました。
もちろん、
大企業のリストラと、
僕たちのような小規模事業者を単純に同じにはできません。
人員削減をすれば必ずV字回復する、
という話でもありません。
でも、
会社を立て直すとき、
「今までやってきたものを全部残したまま再建する」
ことが難しい場合があるのは事実です。
■「戦略」とは、何をやらないかを決めることでもある
僕自身、
昔は、
「あれもやろう」
「これもやろう」
と考えていました。
整骨院。
デイサービス。
リラクゼーション。
訪問。
でも、
今は逆です。
何をやらないか。
こっちを考えるようになりました。
人を増やさない。
店舗を増やさない。
固定費を増やさない。
自分が管理できない事業には手を出さない。
そして、
自分が得意なところへ集中する。
僕の場合、
それが、
訪問鍼灸・訪問マッサージでした。
結果として、
事業規模は小さくなりました。
スタッフ数も減りました。
外から見れば、
昔のほうが、
「経営者っぽかった」
かもしれません。
でも、
今のほうが圧倒的に楽です。
利益率も高い。
管理するものも少ない。
人間関係のトラブルも少ない。
そして何より、
自分の時間があります。
■経営者は「いい人」であることより、判断することが仕事
僕は、
経営者とスタッフが仲良くすること自体は、
悪いことだとは思いません。
雰囲気の良い職場のほうがいいでしょう。
ただ、
経営者とスタッフは、
友達とは違います。
経営者には、
給与を払う責任があります。
会社を存続させる責任があります。
数字を見る責任があります。
だから、
時には、
スタッフから嫌われる判断をしなければならないこともあります。
事業をやめる。
店舗を閉める。
採用を止める。
固定費を削る。
そして、
必要な手続きを踏んだうえで、
雇用の見直しを検討せざるを得ないこともある。
誰からも嫌われないことを最優先にしていたら、
経営判断が遅れることがあります。
僕は、
経営者になって、
それを身をもって経験しました。
■僕は「大きくすること」が成功だと思わなくなった
昔の僕は、
スタッフが増える。
事業が増える。
売上が増える。
これを、
成功だと思っていた部分がありました。
でも、
いろいろ経験して、
今はまったく違います。
僕にとって大切なのは、
規模ではなく、利益と自由です。
月商が大きくても、
人件費と固定費でほとんど残らない。
スタッフのトラブルで毎日電話が来る。
休日もシフトの心配をする。
そんな経営を、
僕はもうやりたいとは思いません。
それより、
一人で管理できる範囲にする。
固定費を小さくする。
利益を残す。
資産を作る。
そして、
自分の時間を増やす。
僕には、
こちらのほうが合っています。
■「切ること」より怖いのは、「切れないこと」かもしれない
人を減らす。
事業をやめる。
店舗を閉める。
こういう話は、
どうしてもネガティブに聞こえます。
でも、
僕は経営を経験して、
別の怖さも知りました。
それは、
「切るべきものを切れないこと」です。
赤字だからやめるべきなのに、
もったいないから続ける。
固定費が重いのに、
今さら引けないから続ける。
人が余っているのに、
嫌われたくないから何も考えない。
そうやって、
判断を先送りする。
その結果、
会社全体が苦しくなれば、
最終的には、
もっと大きな痛みになります。
だからこそ、
経営者には、
ときにはドライな判断も必要だと思っています。
ただし、
ドライであることと、
乱暴であることは違います。
働いてくれた人への敬意は持つ。
法律や契約は守る。
必要な説明をする。
できる限りの手続きをする。
そのうえで、
会社を存続させるために必要な判断から逃げない。
これが、
僕が実際に事業を縮小して学んだことです。
■今振り返ると、失敗したから分かった
整骨院。
デイサービス。
リラクゼーション。
訪問鍼灸・訪問マッサージ。
スタッフをたくさん雇い、
複数の事業をやったからこそ、
僕は分かりました。
僕には、大人数をマネジメントする経営は向いていない。
でも、
それが分かったこと自体は、
僕にとって大きな収穫でした。
もし、
あのまま、
「経営者なら会社を大きくしなければならない」
と思い込んでいたら、
今も人と固定費を抱えて、
毎日ストレスだらけだったかもしれません。
やってみて、
向いていないと分かった。
だったら、
やめればいい。
縮小すればいい。
方向転換すればいい。
僕は、
それも経営だと思っています。
失敗した事業を残すことが責任ではありません。
失敗を認めて、
残すものを決めて、
もう一度立て直す。
僕の場合、
最後に残したのが、
訪問鍼灸・訪問マッサージでした。
そして今は、
大きな会社を作ることより、
一人で自由に稼ぐことを大切にしています。
経営者に必要なのは、
何でも抱え込むことではありません。
何を残し、何をやめるのかを決めること。
そして、
必要なときには、
痛みを伴う判断から逃げないこと。
僕は、
それも経営者の仕事だと思っています。
それではまた。