こんにちは、黒羽です。

訪問マッサージをやっていると、ときどき患者さんからこんなことを言われることがあります。

「先生、今日ちょっと短くない?」

「もう終わり?」

「前に来ていた先生はもっと長くやってくれたよ」

訪問マッサージをやっている施術者なら、一度くらい経験したことがあるのではないでしょうか。

こう言われると、

「もう少し長くやった方がいいのかな?」

と思ってしまう人もいるでしょう。

患者さんからクレームを言われたくないから、5分延ばす。

それでも言われたら、さらに5分延ばす。

気がつけば、最初は20分だった施術が30分、40分になっている。

僕は、これはあまり良い対応ではないと思っています。

なぜなら、

そもそも訪問マッサージは「時間を売る仕事」ではないからです。

今日は、患者さんから「マッサージが短い」と言われたときに、僕ならどう考えるのか。

そして、そもそも訪問マッサージにおける「施術時間」をどう考えればいいのか。

僕自身の考えを書いてみたいと思います。

【そもそも「5部位なら25分」という決まりはない】

まず知っておきたいのが、医療保険の訪問マッサージには、

「1部位につき5分」

「5部位なら25分」

「最低30分施術しなければならない」

というような、部位数に対応した全国一律の施術時間が定められているわけではないということです。

現在の療養費制度では、マッサージは施術した局所数などによって算定する仕組みになっています。

つまり、

「5部位=25分」というのは法定時間ではありません。

ここを勘違いしている人は意外と多いと思います。

だからといって、

「じゃあ5分で帰ってもいいんですね」

という話でもありません。

重要なのは、

その患者さんに必要な施術を、きちんと提供できているかどうか。

僕はここだと思っています。

【僕は基本的に20分で終わります】

では、僕自身はどのくらい施術しているのか。

僕の場合は、

基本的に20分程度です。

5部位の患者さんでも、基本は20分。

変形徒手矯正術を行う患者さんでも、基本は20分。

もちろん患者さんの状態によって多少前後することはありますが、

「5部位だから25分にしよう」

「変形徒手矯正術があるから、さらに時間を延ばそう」

という考え方は基本的にしていません。

では何を変えるのか。

時間ではなく、20分の中で行う施術内容や手技を変えます。

ここが僕の施術時間に対する基本的な考え方です。

【なぜ僕は「時間」で考えないのか】

理由はシンプルです。

僕は、

マッサージに「時間」という概念を持ち込みすぎると、そこら辺にあるリラクゼーションマッサージと同じになってしまう

と思っているからです。

もちろんリラクゼーションを否定しているわけではありません。

リラクゼーションにはリラクゼーションの役割があります。

60分コース。

90分コース。

120分コース。

お客さんが時間を選び、その時間の中でマッサージを受ける。

これは立派なサービスです。

でも、僕たちが医療保険で行っている訪問マッサージとは、目的が違います。

厚生労働省も、単なる疲労回復や慰安、疾病予防を目的としたマッサージは療養費の支給対象にならないとしています。

つまり、保険で行う訪問マッサージは、

「気持ちいいマッサージをできるだけ長く受けてもらうこと」が目的ではない。

僕はそう考えています。

【これは慰安ではなく「治療」です】

ここが今回一番伝えたいところです。

僕は訪問マッサージを、

慰安ではなく治療として考えています。

であるならば、

「何分やったか」

よりも、

「その患者さんに何が必要なのか」

を考えるべきだと思うんです。

例えば、筋緊張が強い。

関節が動かしにくい。

拘縮がある。

変形がある。

左右差がある。

立ち上がりにくい。

その患者さんによって問題は違います。

だったら施術者が考えるべきなのは、

「今日はあと5分何をしよう?」

ではありません。

「この患者さんには、今日は何をする必要があるのか?」

こちらです。

【変形があっても20分。なければ20分】

例えば、変形がない患者さん。

僕なら20分の中で、その人に必要なマッサージを組み立てます。

一方、変形や拘縮などがあって、変形徒手矯正術を行う患者さん。

この場合も僕なら、基本的には20分程度です。

では同じことをするのかというと、当然違います。

時間は同じでも、手技を変える。

施術の配分を変える。

重点を置く場所を変える。

必要であれば関節へのアプローチを組み込む。

その患者さんの状態に合わせて、中身を変えていくわけです。

だから僕は、

施術の価値は「時間」ではなく「手技」にある

と考えています。

【20分だから価値が低いわけではない】

例えば、

20分の施術と40分の施術。

時間だけ見れば40分の方が2倍です。

でも、

施術としての価値まで2倍なのでしょうか?

僕はそうは思いません。

患者さんの状態を評価して、必要なところを見つけ、適切な手技を選択して20分で施術する。

一方で、

「時間が余ったから、とりあえずもう少し揉んでおこう」

と40分行う。

治療として考えたとき、本当に後者の方が価値が高いのか。

ここは考えた方がいいと思います。

施術者として価値を高めるのであれば、

時間を長くするのではなく、20分の中身を濃くする。

僕はこちらの考え方です。

【「短い」と言われたら、まず反論しない】

とはいえ、患者さんから、

「短い」

と言われることはあります。

そんなときに、

「保険では時間の決まりはありませんから」

と返すのは、僕はおすすめしません。

制度上そうだったとしても、患者さんは制度の説明を聞きたいわけではないからです。

まず、

「短く感じましたか?」

「どこか、もう少しやってほしかったところがありますか?」

と聞いてみる。

これだけでいいと思います。

すると、

「腰をもう少しやってほしかった」

「今日は足がつらかった」

「肩をもっとやってほしかった」

など、本当の要望が出てくることがあります。

【時間を増やすのではなく、内容を変える】

例えば、

「腰をもっとやってほしい」

と言われたとします。

そこで僕なら、

「じゃあ次から5分延長します」

とは考えません。

次回の20分の配分を変えます。

腰を重点的にする。

必要性の低い部分を少し短くする。

手技を変える。

患者さんの状態をもう一度確認する。

つまり、

時間を増やすのではなく、施術を変える。

これです。

僕たちは時間を提供しているのではなく、施術を提供しているからです。

【患者さんの「短い」には別の意味が隠れていることもある】

そしてもう一つ知っておきたいのが、

患者さんが言う「短い」は、本当に時間だけの問題とは限らないということです。

例えば、

「もっと腰を触ってほしかった」

「前の先生とやり方が違う」

「マッサージされている感じが少なかった」

「自分の希望を聞いてもらえなかった」

こうした不満を全部まとめて、

「短い」

と表現していることがあります。

場合によっては、施術そのものより会話や安心感を求めている人もいるでしょう。

だから「短い」と言われたら、

単純に時計を見るのではなく、

「この人は何に対して物足りなさを感じているのだろう?」

と考える。

これはかなり重要だと思います。

【施術後に30秒説明するだけでも変わる】

僕がおすすめしたいのが、施術後の説明です。

例えば、

「今日は右腰の緊張が強かったので、そこを重点的にやっています。あと右股関節も動きが悪かったので、そちらにも少し時間を使っています」

と伝える。

たったこれだけです。

同じ20分でも、

何も説明せず、

「はい、終わりました。また来週」

では、

患者さんには何をしてもらったのか分かりません。

でも、

「今日はここが悪かったので、こういう施術をしました」

と言われれば、

「自分の身体をちゃんと見て施術してくれた」

と理解しやすくなります。

僕はこれも施術の一部だと思っています。

【担当者によって時間が違いすぎるのも問題】

複数の施術者を雇っている事業所では、ここも注意した方がいいです。

A先生は20分。

B先生は30分。

C先生は40分。

これでは当然、

「前の先生はもっと長くやってくれた」

という話になります。

特にサービス精神の強い施術者が、

「患者さんが喜ぶから」

と毎回40分、50分やってしまう。

すると患者さんの中では、それが基準になります。

その後20分の先生が担当したら、

「この先生は手を抜いている」

と感じてしまう可能性があります。

だから複数人で運営するなら、

時間だけではなく、

「うちの訪問マッサージは何を目的に、どのような考え方で施術するのか」

という施術方針そのものを共有しておいた方がいいと思います。

【体調によって短くするなら説明する】

もちろん毎回絶対に20分という意味ではありません。

高齢者の訪問では、その日の状態が違います。

今日はかなり疲れている。

痛みが強い。

いつもと様子が違う。

体調面を考えて刺激量を減らした方がいい。

そう判断することもあるでしょう。

そんなときは無理に20分を埋める必要はないと思います。

ただし、

なぜ今日は短くしたのかは伝える。

「今日は少しお疲れのようなので、刺激量を落としてこのくらいにしておきますね」

これだけでも患者さんの受け取り方は違います。

説明なしでいつもより早く帰れば、

「今日は手を抜かれた」

と思われるかもしれません。

施術者には理由があっても、患者さんには説明しなければ分からないんです。

【「もっと長くやって」と言われ続けたら?】

説明しても、

「もっと長くやってよ」

と言われることもあります。

でも僕なら、そこで際限なく延長することはしません。

30分にする。

次は40分にする。

さらに要求されたら50分にする。

これではキリがありません。

しかも一度長くすると、その時間が次回から患者さんにとっての「普通」になります。

僕なら、

「うちでは時間を長くすることを目的にしているのではなく、その日の身体の状態に合わせて必要な施術をしています。物足りない部位があれば、そこは次回から施術の配分を調整しますね」

という考え方を説明します。

患者さんの要望は聞く。

でも、

要望を聞くことと、要求された時間だけ施術することは別です。

ここは施術者側が線を引いていいと思います。

【リラクゼーションと競争しない】

僕は、訪問マッサージの施術者が、

「隣のリラクゼーションは60分だから、うちも長くしなければ」

と考える必要はないと思っています。

そもそも競技が違うからです。

リラクゼーションには、

「長い時間ゆっくり揉んでもらいたい」

という需要があります。

一方、僕たちが提供しているのは医療保険を使った施術です。

だったら、

リラクゼーションと同じ土俵で「何分やったか」を競う必要はありません。

施術者として考えるべきなのは、

時間ではなく、

患者さんの状態。

施術の目的。

手技の選択。

刺激量。

施術後の反応。

こちらだと思います。

【僕は「何分やったか」より「何をやったか」を大切にする】

結局、僕の考えはシンプルです。

僕の場合は、

通常のマッサージでも基本20分。

変形徒手矯正術を行う場合でも基本20分。

変えるのは時間ではありません。

中身です。

その患者さんに必要な手技を考える。

重点部位を考える。

身体の状態に合わせて配分する。

必要があればやり方を変える。

僕はそこに施術者としての価値があると思っています。

20分だから安い施術。

40分だから価値の高い施術。

そういう話ではありません。

時間に価値があるのではなく、手技と判断に価値がある。

僕はそう考えています。

患者さんから、

「先生、今日短くない?」

と言われたら、

焦って時間を延ばす前に、一度考えてみてください。

「この患者さんは、本当は何を求めているのだろう?」

そして必要であれば、

時間ではなく施術内容を変える。

何をしたのか説明する。

なぜその施術をしたのか伝える。

僕たちは、

時間を埋めるためにマッサージをしているわけではありません。

その患者さんに必要な施術を提供するために訪問している。

ここを忘れなければ、

「短い」と言われたときの対応も変わってくると思います。

それでは、また。