こんにちは、黒羽です。

先日、担当している患者さんの担当者会議に参加してきました。

今回の患者さんは50代で四肢麻痺があり、車椅子生活を送られている方です。

会話も普通にできますし、考える力もしっかりされています。

しかし、若くして障害が残ったこともあり、自分でできないことが多く、日頃から介護サービスのスタッフへ様々な要望を伝えられる方でもあります。

担当されているスタッフの中には、

「笑顔を見たことがない。」

と言われる方もいるほどです。

もちろん、その背景にはご本人の苦しみや葛藤があります。

私たちが簡単に理解できるものではありません。

だからこそ、多くのサービス事業者が集まり、どうすれば少しでも生活しやすくなるのかを話し合う担当者会議は、とても大切な場だと思っています。

今回もケアマネジャーを中心に、

訪問看護、

ヘルパー、

リハビリ職、

訪問マッサージなど、

20名近いサービス事業者が集まりました。

こういう担当者会議へ参加するたびに、私がいつも思うことがあります。

それは、

時間を守ることも、他のサービス事業者に対する礼儀である。

ということです。

担当者会議は必要です。

情報共有も必要です。

患者さんの生活の質を向上させるためには欠かせません。

しかし、それだけ多くのサービス事業者を集める以上、

開始時間、

終了時間、

そして会議の進め方まで、

きちんと考えなければいけません。

参加している事業者は、担当者会議だけが仕事ではありません。

この後すぐに利用者さん宅へ訪問する方もいます。

午後から予定がびっしり入っている方もいます。

もし担当者会議が30分延びれば、その影響は参加者全員に及びます。

だから私は、

時間を守ることも、他のサービス事業者に対する礼儀

だと思っています。

会議は長ければいいというものではありません。

必要なことを、

必要な人が、

必要な時間だけ話し合う。

これが理想だと思います。

今回も少し気になったことがありました。

全員で話し合う必要のない内容まで、全員で聞いている時間があったのです。

例えば、

看護師さん同士で十分調整できる内容。

介護職だけで話し合えば済む内容。

そのような内容まで、全員が座って聞いていました。

もちろん情報共有は大切です。

しかし、

正直なところ、

「これはここで話さなくてもいいのでは?」

と思う場面もありました。

専門職同士で話し合えば済む内容は、

その専門職同士で話せばいい。

逆に、

全員で共有しなければならない内容は、

しっかり全員で共有する。

この切り分けができるかどうかも、ケアマネジャーの力量だと思っています。

担当者会議の目的は何でしょうか。

それは、

患者さんのために情報共有を行い、

生活の質を向上させることです。

決して、

長時間話し合うことが目的ではありません。

要点を整理し、

ポイントを押さえ、

限られた時間で最大の成果を出す。

それが本来の担当者会議だと思います。

私は経営者でもあります。

そのため、どうしても全体を見る癖があります。

一部分だけを見るのではなく、

全体を見る。

つまり、

木を見て森を見ず

にならないように考えています。

現場では、

目の前の問題に集中することも大切です。

しかし、

全体の流れ、

他の事業者への影響、

時間、

効率、

そういったことまで考えられる人が、本当の意味でマネジメントができる人なのではないでしょうか。

そして今回、もう一つ印象に残ったことがありました。

患者さんは便秘が続いていました。

薬もかなり処方されており、

医師からは、

「これ以上、薬は増やせません。」

という話でした。

そこで、

運動やリハビリ、

外から刺激を加えて排便を促せないかという話になりました。

その流れで、

「便秘のツボでも押したらどうでしょう。」

という話題も出ました。

ここで私は少し考えました。

訪問マッサージは、

医師の同意書に基づいて施術を行います。

同意された部位に対して施術を行うことが基本です。

もちろん患者さんのためにできることはしたい。

その気持ちは誰よりもあります。

ですが、

ここで安易に、

「では私がお腹のマッサージもやります。」

と言ってしまうのは危険だと思いました。

一見すると良いサービスに思えます。

患者さんも喜ばれるでしょう。

医師からも感謝されるかもしれません。

しかし、

そこには現場ならではの問題があります。

まず、この患者さんは普段、車椅子に座った状態で施術をしています。

もし腹部マッサージを行うとなると、

車椅子からベッドへ移乗し、

仰向けになっていただき、

腹部を施術し、

終われば再び車椅子へ戻る、

という一連の流れが必要になります。

この患者さんは全介助での移乗になります。

つまり、

移乗だけでもかなり時間がかかります。

さらに、

移乗回数が増えれば増えるほど、

転倒や事故のリスクも高くなります。

もちろん安全第一で行います。

しかし、

リスクをゼロにすることはできません。

そして何より、

そこまで時間をかけて毎回腹部マッサージを追加する必要が本当にあるのでしょうか。

ここは冷静に考えなければいけません。

訪問マッサージは、

限られた時間の中で施術を行う仕事です。

患者さん一人だけを施術しているわけではありません。

この後も別の患者さんが待っています。

その中で、

全身のマッサージ、

関節運動、

ストレッチに加えて、

腹部マッサージまで毎回行えば…。

気付けば施術時間は20分を超え、

25分、

30分となってしまいます。

それが毎日続けば、

スケジュール全体にも影響してきます。

さらに怖いのは、

一度始めたサービスは患者さんにとって「当たり前」になるということです。

最初は善意だったことが、

いつしか当然のサービスになります。

そして途中でやめようとすると、

「前はやってくれていたのに。」

と言われてしまうこともあります。

だから私は、

こちらから積極的に、

「私がやります。」

とは言わないようにしています。

もちろん、

正式に依頼があり、

本当に必要であれば検討します。

しかし、自分からサービスを増やすことは慎重であるべきだと思っています。

今回であれば、

車椅子上でも安全に行える便秘に関係するツボへの刺激程度であれば十分対応できます。

それであれば、

移乗も必要ありません。

転倒リスクもありません。

施術時間にも大きな影響はありません。

患者さんへの負担も少なく済みます。

現場では、

「患者さんのために。」

という言葉をよく耳にします。

もちろん、その気持ちはとても大切です。

 

ですが、

私はもう一つ大切なことがあると思っています。

それは、

「患者さんのため」と「過剰サービス」は違う。

ということです。

新人の頃は特にそうですが、

頼まれたら断れない。

少しでも喜んでもらいたい。

役に立ちたい。

そんな気持ちから、ついついサービスを増やしてしまう先生は少なくありません。

私も若い頃はそうでした。

「これもやってあげよう。」

「ついでだからこれも。」

「少し時間が延びても大丈夫だろう。」

そんな積み重ねをしてしまうことがあります。

しかし、その積み重ねが後から自分自身を苦しめることになります。

例えば5分延びる施術。

「5分くらいなら。」

と思うかもしれません。

しかし、それが1日10人なら50分です。

1か月では約17時間。

年間では200時間近くになります。

しかも、そのサービスは患者さんにとって当たり前になります。

「今日はやらないんですか?」

「前はやってくれていましたよね。」

そう言われてしまうと、途中でやめることは非常に難しくなります。

だからこそ、

サービスは最初が肝心なのです。

もちろん、本当に必要であれば対応します。

医師から正式に依頼があり、

施術内容を変更する必要があるのであれば検討します。

しかし、

こちらから積極的に仕事を増やす必要はありません。

今回も最終的には、

「まずは様子を見ましょう。」

という結論になりました。

私はそれで良かったと思っています。

もし対応するとしても、

車椅子上でできる範囲。

つまり便秘に関係するツボへの刺激程度が現実的ではないかと思っています。

それ以上になると、

移乗が必要になります。

時間も延びます。

事故のリスクも増えます。

そして何より、

本来の施術時間の中で行うべき内容とのバランスが崩れてしまいます。

訪問マッサージは医療保険です。

私たちは医師の同意書に基づいて施術を行っています。

同意された部位を適切に施術することが基本になります。

その基本を崩してまで、

善意だけでサービスを追加することが、本当に患者さんのためになるのか。

私はそうは思いません。

実はこれは経営の話でもあります。

私はよく、

「いい先生ほど疲弊して辞めてしまう。」

という話を聞きます。

その理由の一つが、

頑張りすぎることです。

頼まれたら断れない。

何でも引き受ける。

時間をオーバーしてでも対応する。

休憩時間を削る。

昼食を急いで済ませる。

その積み重ねで、

結果として自分自身が疲れ切ってしまいます。

そうなれば、

長く患者さんを支えることもできません。

だから私は、

継続できるサービスこそ、本当に良いサービスだと思っています。

無理をしない。

時間を守る。

安全を守る。

収益も守る。

そして長く患者さんを支え続ける。

これが結果として患者さんの利益にもつながります。

担当者会議でも同じです。

時間を守ること。

必要なことだけを話し合うこと。

専門職同士で済む話はそこで完結させること。

そして全体を見ること。

私は経営者になってから特に感じますが、

どうしてもサラリーマンの方は、

目の前のことだけを見てしまう傾向があります。

もちろん全員ではありません。

素晴らしいケアマネジャーさんもたくさんいらっしゃいます。

ただ、

「木を見て森を見ず」

になってしまう方も時々見受けられます。

一つの問題を深く議論することも大切ですが、

その時間によって他の19人の予定が遅れてしまうのであれば、

それは本当に全体として良い判断なのか。

経営者は自然とそういう見方をします。

だから私は担当者会議でも、

常に全体を見るようにしています。

今回の担当者会議でも、改めて感じたことがあります。

患者さんのために頑張ることは大切です。

しかし、

頑張りすぎることは違います。

サービスを増やしすぎることも違います。

大切なのは、

長く続けられる形で患者さんを支えること。

そのためには、

時間を守ることも必要です。

他のサービス事業者への礼儀も必要です。

過剰サービスをしない勇気も必要です。

そして、

「これは本当に私たちがやるべきことなのか。」

と一度立ち止まって考えることも必要だと思います。

患者さんに喜んでもらうことと、

何でも引き受けることは違います。

プロとして必要なのは、

患者さんの利益、

安全、

時間、

制度、

そして自分たちが継続して支援できること。

そのすべてを考えながら判断することです。

今回の担当者会議は、改めてその大切さを考えさせられる一日でした。

皆さんも担当者会議へ参加される機会があると思います。

ぜひ目の前のことだけではなく、

少し引いた視点から、

「全体として一番良い方法は何だろう。」

という視点で参加してみてください。

きっと今までとは違った景色が見えてくると思います。