こんにちは、黒羽です。
令和8年7月から、「はり・きゅう・あん摩マッサージ」の療養費の取扱いが大きく見直されました。
「少しルールが変わっただけでしょ?」
と思われる先生もいらっしゃるかもしれません。
しかし今回の改定は、今後の療養費請求や個別指導、監査にも影響する重要な内容が多く含まれています。
私自身も通知や疑義解釈を読み込みましたが、「ここは誤解しやすいな」と感じる部分がたくさんありました。
そこで今回は、実務で特に重要なポイントを7つに絞って、できるだけ分かりやすく解説します。
① 紹介料・キックバックは禁止
今回、一番厳しくなったのが「患者紹介」に関するルールです。
例えば、
・施設へ紹介料を支払う
・ケアマネへ謝礼を渡す
・病院へ同意書を書いてもらう見返りとしてお金を渡す
このような行為は、療養費の支給対象外となる可能性があります。
しかも注意しなければならないのは、
「紹介料」
という名前ではなく、
「業務委託料」
「事務手数料」
「営業協力費」
など別の名称であっても、実質的に患者紹介や同意書交付の対価であれば認められません。
例えば、
老人ホームへ
「利用者を紹介してくれたら1人5,000円支払います。」
という契約をしていた場合はもちろん、
「毎月業務委託料として3万円支払います。」
という契約でも、その実態が紹介料であればアウトです。
施設や病院との契約がある先生は、一度契約内容を見直しておくことをおすすめします。
② 自家施術の範囲が明確になりました
今回、自家施術についても範囲が整理されました。
対象となるのは、
・同居または生計を一にする家族
・自分の施術所の従業員
・関連施術所の開設者や従業員
です。
さらに関連施術所とは、
・開設者が同じ
・代表者が同じ
・代表者が親族
・役員の3割以上が親族
・人事や資金面で実質的に一体経営
なども含まれます。
例えば、
本院と分院があり、代表者が夫婦だったり、親子だったりする場合は「関連施術所」と判断される可能性があります。
グループで施術所を運営している先生は、一度自家施術に該当しないか確認しておきましょう。
③ 同意書の様式が変更
同意書には、
「同意書交付の留意点(裏面)を確認しました」
というチェック欄が追加されました。
そのため、医師へ同意書を渡す際は、
・見開き印刷
または
・裏面(別紙)を添付
して、医師が内容を確認できる状態にする必要があります。
「同意書だけ渡して終わり」
という運用は見直しておいた方が安心です。
④ 訪問施術のルールがより厳格になりました
今回、多くの先生が一番気になっているのがここではないでしょうか。
訪問施術は、
「歩行困難など、通院できない患者さんが対象」
という原則が改めて明確になりました。
マッサージの場合
マッサージでは、医師が同意書で
「訪問又は往療を必要としない」
と判断した患者さんは、
本来、施術所へ通院して施術を受けることが前提です。
そのため、
患者さんのご自宅へ訪問しているにもかかわらず、
「通所施術料」で請求することは認められません。
つまり、
「訪問したけれど通所施術料だから大丈夫」
という考え方は通用しなくなりました。
では出張専門施術者は?
ここが今回の通知で非常に重要なポイントです。
出張専門施術者は、
施術所(治療院)そのものを持っていません。
つまり、患者さんが通院する場所が存在しません。
そのため、患者さんの自宅や施設で施術を行っても、
通所施術料を算定できる例外
として認められています。
つまり、
患者さんの自宅で施術しているからといって、
すべて訪問施術料になるわけではありません。
出張専門施術者だけは、
「通所する施術所が存在しない」
という事情を考慮して特例が設けられているのです。
鍼灸の場合
鍼灸では、医師が訪問の必要性を判断する欄はありません。
そのため、
患者さんが通院困難かどうかは施術者が判断することになります。
しかし、
実際に歩行困難などで訪問が必要な患者さんへ訪問したのであれば、
訪問施術料(または往療料)を算定することが原則です。
逆に、
患者さんは十分歩けるのに、
「家へ来てほしいから」
という理由だけで訪問し、
訪問施術料を請求することは制度趣旨に反します。
また、
「それなら訪問したけれど通所施術料だけ請求すればいいのでは?」
と思うかもしれませんが、
これも通知では
実態と請求内容が一致しないため適切ではない
という考え方が示されています。
つまり、
訪問したなら訪問施術料、通所なら通所施術料。
実態どおり請求することが求められています。
⑤ 明細書発行のルール
今回から明細書発行加算についても整理されました。
明細書を発行するたびに
10円の加算
を算定できます。
また、
患者さんが希望すれば、
1か月まとめて明細書を交付することも可能です。
この場合、
患者さんの意思確認書は一度取得すればよく、
毎月取り直す必要はありません。
ただし、
その意思確認書は
5年間保存
する必要があります。
⑥ 月16回以降は半額になります
同じ患者さんへの施術が
月16回以上
になると、
施療料
訪問施術料
電療料
は16回目以降、
50%
になります。
ここで気になるのが、
「本院と分院で分ければ16回にならないのでは?」
という疑問です。
確かに形式上は施術所ごとに回数を数えます。
しかし今回の通知では、
回数を分散させて16回ルールを回避する運用は制度趣旨に反する
と明記されました。
例えば、
寝たきりの患者さんへ
本院8回
分院8回
というように、
意図的に施術所を分けて逓減を避ける運用は問題になる可能性があります。
特に訪問施術では、
患者さんが寝たきりであることが多いため、
「今日は本院、次回は分院」
という運用には合理的な説明が必要になるでしょう。
⑦ 訪問施術総括表の提出
訪問施術料4・5を算定する施術所では、
新たに
「訪問施術総括表」
の提出が必要になります。
施設ごとの
・訪問回数
・訪問日数
・同一日訪問人数
・集中率
などを記載する資料で、
保険者が請求内容を確認するための重要な資料になります。
施設訪問が多い先生ほど、
正確な記載が求められます。
最後に
今回の改定を一言で表すなら、
「療養費請求の透明性をさらに高める改定」
だと思います。
紹介料の禁止。
自家施術の明確化。
訪問施術の適正化。
明細書の義務化。
16回ルール。
訪問施術総括表。
これらはすべて、
「本当に適正な療養費請求が行われているか」
をこれまで以上に確認していくという、厚生労働省からのメッセージとも言えるでしょう。
制度は少しずつ変わっていきます。
「知らなかった」では済まされない時代になっています。
だからこそ、制度改正の内容を正しく理解し、自院の運用を見直していくことが大切です。
今後も、訪問鍼灸・訪問マッサージに役立つ制度改正や実務情報を、できるだけ分かりやすくお届けしていきます。ぜひ参考にしていただければ幸いです。