こんにちは。黒羽です。
今日はこのようなテーマでお話しします。
全国で相次いでいる脱毛サロンの倒産問題についてです。
今起きていることは、単なる一部店舗の経営不振ではありません。
「高額前払い+長期・無制限サービス」という業界全体のビジネスモデルそのものが、大きな構造的リスクを抱えていることが背景にあります。
多くの脱毛サロンでは、「一生通い放題」「無制限」「永久に通える」といった魅力的な言葉を前面に出し、数十万円単位の契約を一括前払いで結ばせる仕組みを取っています。
これは事業者にとっては先に資金を確保できるメリットがありますが、消費者にとっては大きなリスクを抱える形になります。
最大の問題は、倒産・休業時の救済が極めて困難である点です。
サロンが破産手続きに入った場合、利用者は債権者の一人として扱われます。しかし破産手続きでは、優先的に支払われる債権が存在し、前払金を支払った利用者への返還は後回しになります。結果として、ほとんど戻らない事例が多数報告されています。十分なサービスを受けられないまま、支払ったお金だけが失われるケースが現実に起きています。
さらに問題視されているのが、「通い放題」「無制限」といった表示と契約実態のギャップです。
広告では自由に通える印象を与えながら、契約書では一定回数以降は“無償サービス扱い”とされていたり、予約制限や期間制限が事実上設けられているケースもあります。消費者が想像するサービス内容と、契約上の実態に大きな差があることが、トラブルの温床になっています。
実際、国民生活センターによると、脱毛エステに関する相談は年間数千件規模で推移しています。特に解約・返金・倒産・料金に関する相談が大きな割合を占めており、「通い放題コースの中途解約・精算トラブル」だけでも年間2,800件を超える相談が寄せられているとされています。
近年は若年層、特に10〜20代からの相談が急増しています。
また、ヒゲ脱毛など男性向けサービスの拡大に伴い、男性の相談件数も増加しています。被害は一部の層に限定されるものではなく、広範囲に拡大しているのが現状です。
倒産ラッシュも深刻です。
大手脱毛サロンや医療脱毛クリニックの破綻が相次ぎ、1社あたり数万人規模の利用者が前払い分の施術を受けられないまま被害者となるケースも報じられています。ここ数年で累計十万〜数十万人規模の影響が出ているとされています。
制度面にも課題があります。
消費者庁は高額前払い契約について「前受金保全措置」(信託など)を確認するよう注意喚起していますが、多くの事業者が十分な保全措置を講じていないのが実情です。制度は存在しても、実務が追いついていないというギャップが指摘されています。
また、クレジット契約で支払っている場合でも、「支払停止の抗弁権」を十分に理解していない消費者が多く、倒産後も支払いだけが続いてしまうケースが見られます。本来は一定の条件を満たせば支払いを止められる可能性があるにもかかわらず、その制度が十分に活用されていないのです。
中途解約時の精算ルールも複雑で、解約手数料が高額だったり、解約連絡がつかない、精算計算が不透明といった相談も多数あります。「途中でやめたらほとんど返ってこない」「解約したのに請求が止まらない」というトラブルが後を絶ちません。
広告や勧誘手法にも問題があります。
「月額○○円」と安さを強調しながら、実際は総額が高額であるケースや、施術回数に事実上の上限があるにもかかわらず「無制限」と表示するケースなど、消費者が誤認しやすい表現が横行しています。
さらに、無料カウンセリングをきっかけに、その場で高額な長期契約を迫られる事例も多く報告されています。冷静に比較検討する時間がない心理状態を利用した営業手法は、大きな社会問題となっています。
政策レベルでは、前払金ビジネスの規制強化や保全措置の義務化について議論が続いています。しかし根本には、参入障壁が低く競争が激化し、広告費と価格競争に依存した業界構造があります。前払金に依存することで資金繰りを回し続ける、いわば自転車操業に陥りやすい環境が、倒産リスクを高めているのです。
今回の問題は、単発の不祥事ではありません。
「高額前払い」「長期・無制限サービス」「倒産時の前払金保護の不備」という三点セットが、制度と業界構造レベルの課題として存在していることが本質です。
消費者側に求められるのは、契約内容を冷静に確認すること、前受金保全措置の有無を確認すること、クレジット契約の仕組みを理解することです。しかし同時に、事業者側の透明性向上と制度の整備が不可欠です。
「通い放題」「永久」「無制限」という言葉の裏側にあるリスクを、私たちはもっと冷静に見る必要があります。
お金は、支払った瞬間に“戻らない前提”で考えるべきです。
特に高額前払い契約は、相手の経営が何年も安定して続くことを前提にした賭けでもあります。
構造を理解することが、最大の防御になります。