こんにちは、黒羽です。

今日は、正直あまり表で語られないけど、
訪問鍼灸・訪問マッサージ、整骨院をやっているなら
誰にでも起こりうる現実的なテーマについてお話しします。

それは、

「先生の施術のあと、痛くなったんですけど…」

と、患者さんやご家族から言われたときの対応です。

この一言、
経験が浅い頃ほど心臓がギュッとしますよね。

・自分のせいだったらどうしよう
・揉み返しかもしれない
・でも、責任を認めたと思われたら怖い
・変に対応するとクレームが大きくなりそう

こんな気持ちが一気に押し寄せてくると思います。

ここで多くの先生がやってしまいがちなのが、
「善意で何とかしようとする対応」です。

たとえば、

「じゃあ、しばらく無料で様子を見ましょうか」
「次はお金いらないので、もう一度施術しますね」

こういう言葉、
一見すると誠実で優しい対応に見えます。

ですが、実はこの対応、
一番リスクが高い選択肢になることがあります。

なぜか。

まず大前提として、
施術者と利用者の間にどれだけ信頼関係があったとしても、
無償施術=責任が軽くなるわけではありません。

「いつも来てくれているから」
「関係性はいいから大丈夫だろう」

この感覚は、法律や保険の世界では一切考慮されません。

仮に、無償で施術を続けていて症状が良くなったとしても、
それで「賠償責任がなくなる」ことはありません。

また、

「口約束で了承を得た」
「念のため書面を交わした」

こうした対応も、
消費者契約法の観点から見ると
施術者側の責任を全面的に免除できないケースがほとんどです。

さらに怖いのは、
あとになって慰謝料や損害賠償を請求された場合です。

このとき、
医師の診断がなければ、賠償責任保険の支払い対象にならない
というケースも少なくありません。

つまり、

・善意で無償施術を続けた
・でも医療機関は受診していない
・結果、保険も使えない

という、
一番しんどい形で問題が残る可能性があるんです。

ここでよく聞くのが、

「病院を勧めたら、責任を認めたと思われそうで怖い」
「逃げていると思われるんじゃないか」

という声です。

でも、これは完全に逆です。

医療機関の受診を勧めることは、
責任逃れではありません。

むしろ、

・安全配慮義務を果たしている
・施術者としてできる範囲と、できない範囲を明確にしている
・患者さんの身体を最優先に考えている

という、極めて真っ当な対応です。

逆に言えば、
無償施術を安易に始めること自体が、

「施術が原因であることを前提にした対応」

と、後から解釈されてしまうリスクもあります。

では、どう対応するのが現実的なのか。

もし店舗側の判断で無償施術を行う場合でも、
必ず次の視点を持ってください。

回復状況を毎回きちんと確認すること。
そして、

・思ったより痛みが強い
・回復が遅い
・違和感が長引いている

こう感じた時点で、
必ず医療機関の受診を勧めること。

このとき大事なのは、

「うちでは診断はできないこと」
「安全を最優先に、正確な状態を把握する必要があること」

を、冷静に、淡々と伝えることです。

無償施術は、
1週間以内で状況を判断するのが目安です。

長くても、1か月以内。

それ以上ズルズル続けるのは、
施術者にとっても、患者さんにとっても
リスクしかありません。

そして、
医療機関を受診してもらうまでの間は、
無償施術はいったん中断する。

医師から、

「施術を受けても問題ない」
「この内容なら大丈夫」

という了承が得られて、
はじめて再開するかどうかを協議する。

この順番が、
一番トラブルになりにくい流れです。

僕が伝えたいのは、

「冷たい対応をしろ」
「突き放せ」

ということではありません。

むしろ逆です。

感情ではなく、
仕組みと線引きで、自分と相手を守る

これができる施術者ほど、
結果的に信頼を失いません。

誠実さとは、
何でも引き受けることではなく、
「できないことを、正しく伝えること」でもあります。

今日の話が、
あなたが将来、不要なトラブルで
心をすり減らさないための
ひとつの参考になれば嬉しいです。