こんにちは、黒羽です。

今日はちょっと昔話をさせてください。
僕が若い頃に働いていた整骨院の話です。

その整骨院には、だいたい10人くらいスタッフがいました。
ほとんどが学生で、資格を持っているのは院長と、もう1人だけ。
これは決して珍しい話ではなく、当時も今も、こういう整骨院は本当に多いと思います。

施術スタイルは、いわゆる「全身マッサージ20分」。
来た患者さん全員に、頭から足まで、とにかく全部揉む。

正直に言うと、かなりしんどかったです。
特に体格のいい方が来ると、それだけで体力はごっそり持っていかれる。
1人終わっただけで、もう一仕事終えた感覚でした。

さらに、その院には謎の「指名制度」がありました。
この患者さんはこの先生、あの患者さんはあの先生、という感じです。

話がうまい先生がいて、その人にはいつも同じ4人の患者さんが付いていました。
でも、その先生はとにかくしゃべる。
しゃべりながら、笑わせながら、場を盛り上げながら施術をする。

結果どうなるかというと、
時間はオーバー、本人は汗だく、施術も雑になりがち。
正直、横で見ていて「めちゃくちゃ疲れそうだな」と思っていました。

一方で、僕は正直、しゃべるのが得意なタイプではありません。
というより、「無理してしゃべるのが嫌」なタイプです。

なぜ、しゃべりたくない人とまで無理にしゃべらないといけないのか。
なぜ、笑わせないといけないのか。
なぜ、施術家がお笑い芸人みたいな役割を求められるのか。

ずっと疑問でした。

だから僕は、必要以上に雑談はしませんでした。
体のこと、施術のこと、必要な説明だけを話す。
それ以外は、静かに施術に集中する。

すると不思議なことに、
「この先生、落ち着くね」
「静かでいい」
そう言ってくれる患者さんも、ちゃんといました。

これは施術家側だけの話じゃありません。
患者さんの中にも、実は

・静かに施術を受けたい人
・あまり雑談したくない人
・気を使わずに体を任せたい人

こういう方は、確実にいます。

でも、もみもみ型の整骨院では、
「とにかくしゃべる」
「とにかく笑わせる」
「とにかく感じ良くする」
これが正解のような空気があります。

そして全身マッサージをして、
体の説明はそこそこ、
保険を使って安く返す。

このスタイルに、違和感を感じる施術家も少なくないはずです。

本来、僕たちがやるべき仕事は何でしょうか。

適正に保険を使うこと。
適正な部位を、適正な刺激で施術すること。
体の状態を見て、必要なケアをサポートすること。

雑談が悪いわけではありません。
施術中の会話も大切な要素です。

でも、それは「必要最低限」でいい。
無理して盛り上げる必要はないし、
無理して自分を削る必要もない。

しゃべるのが得意な施術家もいれば、
静かな施術が得意な施術家もいる。

どちらが正しい、ではありません。
大事なのは「自分に合わない役割を無理に演じないこと」。

無理にしゃべり続ける施術は、
施術家の体力も、集中力も、気力も削ります。
それが積み重なると、仕事自体がしんどくなります。

患者さんとの会話は、
「相手が求めている量」で十分です。

体の話を中心に、
必要な説明を丁寧に、
余計なことは言わない。

それでも信頼は作れます。
むしろ、その方が長く続く関係になることも多い。

施術家にも、患者さんにも、
いろんな価値観があります。

だからこそ、
「こうしなきゃいけない」という思い込みから、一度離れてみる。

自分はどんな施術家でいたいのか。
どんな会話なら無理がないのか。

それを考えることが、
結果的に整骨院や治療院の在り方、
そして“繁栄の仕方”にもつながっていくと、僕は思っています。