こんにちは、黒羽です。
いま、日本の医療制度が大きく揺れています。
その中でも、最近とくに話題になっているのが――
「高齢者も医療費を3割負担にすべきじゃないか?」
という声です。
これ、ニュースではチラッと聞くけど、
本当にそうなったらどんな影響があるのか…あまり語られていませんよね。
そこで今回は、もし本当に高齢者の医療費が3割負担になったら、
現場で何が起きるのか?社会はどう変わるのか?を、
わかりやすく解説してみようと思います。
そもそも高齢者の“今の負担”はどれくらい?
現在、75歳以上の方(後期高齢者)の医療費自己負担は、
・基本は1割負担
・所得が高い人は2割または3割負担
となっています。
つまり、大多数の高齢者は1〜2割で済んでいるわけです。
たとえば、1万円の診療費がかかったとしても、
自己負担は1,000〜2,000円。
ところが、これを3割に引き上げると――
一気に3,000円負担になる。
この差って、年金だけで暮らしている方にとっては、
かなり大きな負担になるんですよね。
【起きうる現象①】通院控え・受診控えが一気に増える
まず起こるのが、「医者に行かない人が増える」ことです。
「ちょっと調子が悪いけど…まぁ様子を見よう」
「いつもの薬だけど、今月は行かなくてもいいかな」
こんなふうにして、
“軽い症状でも医者にかかる”という習慣が薄れていく可能性があります。
それ自体は悪いことじゃないように見えるかもしれません。
でも、問題は――
「重症化する人が増える」ことなんです。
たとえば、高血圧の薬をもらいにいくのをサボって脳梗塞になる。
腰が痛いのを放置して寝たきりになる。
“行かない自由”の代わりに、“重症化リスク”が跳ね上がるという、
まさに表裏一体の結果になります。
【起きうる現象②】救急外来や入院が“詰まる”
もうひとつ怖いのは、
「いよいよダメになってから来る」人が増えること。
軽い症状で早めに来てもらえれば、
外来で済んだり、簡単な処置で終わるものが、
数週間ほったらかされて、重症になって救急搬送される。
そうなると、
・救急車が足りない
・ベッドが足りない
・医療費は逆に高くなる(急性期医療は高額)
という、制度全体としての“逆効果”が起こります。
つまり、「自己負担を増やせば医療費が減る」と単純に思われがちですが、
本当に減るのは“初期医療費”であって、“トータルの医療費”ではない可能性が高いんです。
【起きうる現象③】“自己判断”で民間療法に走る人が増える
そして、現場の僕らがもっとも気になるのがココ。
医療費が高くなって病院に行きづらくなった人が、
代わりに「保険の効かない民間療法」に流れてくる。
鍼灸・マッサージ・整体、漢方、健康食品、サプリメント…
もちろん、こうした選択肢が悪いわけじゃありません。
ただ、医療的な判断が必要な症状を、素人判断で誤魔化す人が増えてしまうのは、リスクが大きいんです。
治療院にも、「これ…病院に行くべきでは?」という方が増える可能性があります。
そして、保険診療が減る中で、
“なんでも自費”で対応できる人と、そうでない人の“健康格差”が広がっていく。
これは「医療を受けられるかどうかが、財布の厚さで決まる社会」につながっていきます。
じゃあどうすればいいのか?
これは簡単な話ではありませんが、
一つ言えるのは――
「負担割合の見直し」だけでは、問題は解決しないということです。
必要なのは、
・予防医療の徹底(病気にしない)
・健康教育の充実(自分で守れる)
・在宅医療や地域ケアの強化(病院に依存しない)
・軽症で相談できる場の拡充(アクセスしやすく)
そして、“早めに診て、軽いうちに手を打つ”という考え方を
制度全体がもっと大事にしていくことなんです。
最後に:制度の変化は、僕たちの“未来のリアル”に直結する
高齢者の3割負担――
一見、財政改善のために正しそうに見えますが、
その裏には、静かだけど深刻な変化が待っているということを、
僕たちはもっと知っておいたほうがいいと思うんです。
「自分はまだ若いから関係ない」なんて言っていられない時代。
制度は、いつでも“静かに変わっていく”ものです。
これからの社会をどうするか?
どこで手を打つか?
それを考えることが、“今を生きる大人の責任”なんじゃないかなと、僕は思っています。