こんにちは、黒羽です。

訪問鍼灸やマッサージをしていると、ときどきこんな場面に出くわすことがあります。

施術中に電話が鳴り、患者さんが出ると――

「特別な布団を今だけ半額でご案内しています」
「関節がラクになるサプリメントを定期購入でどうですか?」

いわゆる“高齢者をターゲットにした営業電話”ですね。

電話を切った後、患者さんがこう言います。

「これね、娘には内緒なんだけど毎月頼んでるの」
「このふとん買ったら、腰が軽くなった気がするのよ」

正直に言います。
僕たちから見ると、「これはちょっと…」と感じること、ありますよね。
でも、ここで問題になるのが 「それを言うべきか、言わないべきか」 なんです。

【なぜ“言うべきかどうか”に迷うのか?】

僕たちは治療家です。
患者さんの体と向き合い、よりよい健康状態へ導くのが仕事です。

だからこそ、「それ、あまり意味がないどころか…」と思う商品に手を出している患者さんを見ると、
どうしても言いたくなりますよね。

でも、相手がその商品を「自分で選んで」購入していて、
「効いている気がする」「元気になった気がする」と言っている場合、
それを真っ向から否定するのはなかなか難しい。

こちらが善意で「やめた方がいいですよ」と言ったつもりでも、
相手にとっては「信じていたものを否定された」と感じてしまうこともあるからです。

【では、どうすればいいのか?】

僕が心がけているのは、“正義感を出しすぎない”ことです。

大事なのは「その人がどう感じているか」。
たとえ、僕の感覚では「それ、損してる」と思っても、
相手がそれによって前向きになっていたり、気分がよくなっているのであれば、
無理に止める必要はありません。

ただし、体に悪影響がある場合や、金額が明らかに常識を超えている場合には、
やんわりと家族に伝えることもあります。

たとえば…

「最近、○○さんが毎月サプリを購入されているようですが、
 ご家族でもしご存知なければ一度お話された方がいいかもしれません。」

「僕が口を出す立場ではないですが、
 最近は高齢者向けの過剰営業も増えていると聞きますので、少し気になりまして…」

あくまで、“気になったから軽く共有”というスタンス。
このくらいが、角が立たず、後々も関係性を保てる絶妙なラインです。

【今すぐできること】

・「絶対ダメ!」ではなく、「それ、本当に大丈夫ですか?」と投げかける
・ご家族が信頼できる関係にあるなら、軽く耳打ち程度に共有する
・健康食品などが施術や服薬とバッティングしないかだけは、必ず確認する
・何か気になる場合は、介護支援専門員(ケアマネ)に相談するのも一手です

僕たちは医者ではありませんが、
一番近い距離で高齢者の生活と関わっている存在です。

だからこそ、「言うか・黙るか」ではなく、
「どう伝えるか」に意識を向けていきたいですね。

感情で動かず、冷静に、でも誠実に。
それが信頼される訪問施術家の“あり方”だと僕は思っています。