こんにちは、黒羽です。

夏の訪問施術中、

汗が流れてくるほどの暑さの中で、患者さんはなぜか涼しい顔。

でもこちらはもう、タオル必須、

首筋に汗をかきながら施術している…なんて経験、ありませんか?

エアコンはあるのに、なぜか使わない。

つけた方がいいのに、「うちは大丈夫」の一点張り。

今日は、そんな高齢者の方々に、

上手にエアコンを使ってもらうための考え方と伝え方についてお話します。

 

◆ そもそも、なぜ高齢者はエアコンを使いたがらないのか?

これは多くの方が感じている疑問ですよね。

でも、実はちゃんと理由があるんです。

 

①「寒さ」に対する感覚が若い頃と違う

年齢を重ねると、体温調節機能が衰えてきます。

特に暑さを感じにくくなっているケースも多いんです。

つまり、自分では「ちょうどいい」と思っていても、実際は暑すぎることがよくある。

「汗が出てないから大丈夫」と言ってても、体はすでに限界、ということも珍しくありません。

 

②「昔の常識」が今も残っている

「昔はエアコンなんて無くても元気だった」

「暑さに耐えてこそ健康」

「電気代がもったいない」

こういった“戦後の節電文化”や“根性論”がベースにある方も多く、

我慢すること=美徳とされてきた世代なんですよね。

でも、今は熱中症で倒れる高齢者が年間何万人もいる時代です。

その「昔の常識」は、今では命を危険にさらす原因にもなり得ます。

 

◆ どう伝えたらエアコンを使ってくれるのか?

高齢者の方に「エアコンをつけましょう」と伝えると、

「大丈夫です」「我慢できます」と返ってくることがほとんど。

ではどうしたら受け入れてもらえるのか?

コツは、“自分のため”ではなく、“他人のため”を前提に伝えることです。

 

●「先生が暑そうだから、ちょっとつけましょうか?」

自分のためじゃなく、あなた(施術者)のために気を使うというスタンスなら、

素直に受け入れてくれるケースが多いです。

「汗びっしょりで大変でしょう」

「暑い中、来てもらって悪いから冷やしますね」

といった流れに持っていければ自然ですし、本人も納得してくれます。

 

●「お薬の効果にも影響するかもしれませんよ」

高齢者は“医師の言葉”や“薬の効果”には敏感です。

「暑さで体力が落ちると、お薬の吸収にも影響が出ることがあるそうです」

「最近の先生は“夏は無理せず冷房を使ってください”って指導するんですよ」

といった“医療的な側面”から伝えるのも効果的です。

 

●「〇〇さんはクーラー使って調子いいって言ってましたよ」

他の患者さんの実例を軽く出してあげるのも◎

高齢者の中には、自分だけが特別扱いされるのがイヤな方も多いので、

「皆さんも使ってるし、安心ですよ」

「実際に使い始めて元気になったって声、多いんですよ」

と、“一般的で安心”というイメージを持たせることがポイントです。

 

◆ エアコンを「悪者」にしないこと

「エアコンは体に悪い」と思い込んでいる方もいます。

たしかに、風が直接当たる・冷えすぎる・湿度が下がりすぎるなどのマイナス面もあります。

だからこそ、エアコンを「冷たくて怖いもの」ではなく、

“優しい涼しさ”に調整できる道具だということを伝えてあげてください。

「冷房じゃなくて“除湿”にしておきましょうか」

「少しだけ下げて、すぐ切りますね」

というような、細やかな配慮が信頼を生みます。

 

◆ まとめ

・高齢者がエアコンを使いたがらないのには“文化的・生理的理由”がある

・「自分のため」ではなく「他人のため」に使ってもらう形が◎

・“医療的な視点”や“他の人の例”を交えて自然に促す

・冷房=怖いものではなく、やさしい調整ができる安心感を伝える

 

熱中症で倒れてからでは遅いです。

訪問施術の現場で「ちょっと暑いな…」と感じたら、

その違和感が“命を守る第一歩”になるかもしれません。

患者さんのためにも、

無理せず、優しく、エアコンの存在を伝えてあげてくださいね。