こんにちは、黒羽です。

「示談を結んだら、もうそれで終わりでしょ?」
そんなふうに思っていませんか?

でも実際には――
示談後でも“追加の請求”や“示談の無効”を主張されるケースがあるんです。

特に、治療院やサロンなど施術を伴うビジネスでは、
施術事故やクレーム、説明の不備などが「錯誤」としてトラブルに発展する可能性があります。

今日は、「示談のはずが裁判に…」とならないために、
どんな点に気をつけるべきか?
具体例を交えながら解説していきます。


■ 示談書とはなにか?

まず基本として、示談書とは民事上の責任を双方の合意で解決するための書面です。
そこには、たとえば次のような文言が書かれています。

「本件について、○○円を支払うことにより、これ以上の請求はしない」

これが、損害賠償の最終的な合意であり、
双方がそれを確認したことで、トラブルは“解決”したと見なされるのが通常です。


■ でも…示談が“無効になる”ケースもある

ここで問題になるのが「錯誤(さくご)」です。

法律でいう錯誤とは、本人の意思表示に対応する認識が真実と違っていた場合
つまり、「そう思ってたけど、実際は違ってた」という“思い違い”がポイントです。

たとえば次のようなケースです:

施術後に胸の痛みが出た→整形外科で「打撲(挫傷)」と診断→軽いケガと思って示談書にサイン → 後日、別の病院で「骨折」と判明 → 利用者が『示談は無効だ』と追加請求

こうなると、「示談の際に重要な事実に誤認があった」=錯誤が成立する可能性があります。


■ どんなときに錯誤が起きるのか?

実は錯誤は、意外と日常的な場面で起こっています。

以下は、実際に治療院などで見られる“錯誤トラブル”の一例です。

【施術事故系】

・施術で痛みが出た → 「ただの打撲だと思って示談」→ 後日、骨折や神経障害が判明

・気胸のような症状が再発 → 「以前の施術事故が原因」として追加請求

【説明不足・誤認系】

・パンフレットに誤った記載があったのに、口頭での説明だけで済ませた

・「院長施術」と広告していたのに、実際は数分だけ対応→残りはスタッフ任せ

・回数券を販売した際に、「中途解約・返金不可」の説明がなかった

これらは、お客さまの理解不足や思い違い(錯誤)によって後日トラブルに発展するリスクがあります。


■ 示談書に“入れるべき”項目とは?

錯誤による示談の無効や再請求を防ぐには、
示談書の記載内容をきちんと整備することが重要です。

以下のポイントを見直してみましょう。

賠償金額と内容(交通費・治療費・慰謝料など)を明記
「これ以上の請求を行わない」旨の文言
今後症状が悪化した場合の取り扱いに関する条項
診断内容と症状が現時点での判断であることの確認
「相互に納得の上、合意した」ことを記載

ただし、それでも完全にトラブルを防げるとは限りません。
だからこそ、「錯誤が起きる可能性のある“対応”」自体を減らすことも重要です。


■ 黒羽からのアドバイス

施術業務は「技術だけ」で乗り切れる時代ではありません。
いまや、リスクマネジメントと説明力が必須スキルです。

・示談書を交わすときは、説明内容も必ず書面化する
・同意書や問診票は、トラブル時の防波堤になる
・「説明したつもり」は通用しない。“伝わったか”が重要

そしてもうひとつ、忘れてはならないのが…

「1件のクレームの影に、沈黙している10人がいる」

つまり、声を上げた人だけが錯誤を感じたのではなく、他にも思い違いをしている人がいるかもしれないということです。

だからこそ、「今回はこの人だけだった」で済ませず、
パンフレットやHPの表現、施術前の説明の質を見直していきましょう。


最後に

示談は“終わり”ではなく、“スタートライン”でもあります。

大事なのは、「後で揉めないように、今なにをしておくか?」です。

・文書の整備
・説明の明確化
・錯誤リスクの想定
・利用者目線での伝え方の工夫

このあたりを見直すだけで、あなたの院はトラブルから一歩遠ざかります。

小さな一手間が、信頼を守る最大の防御策です。