こんにちは、黒羽です。

最近、とある相談がありました。

「デイサービスに通っている高齢者の方々に、
往療料を取らずに、施術料だけで保険マッサージを提供しても問題ないですか?」
「デイサービスの開始時間前に早く来てもらってやれば、いけるんじゃないかと…」

結論から先にお伝えします。

それ、めちゃくちゃ危ないです。
いずれ返戻、もしくは返還命令が来る可能性が非常に高いです。

やっている本人は「工夫したつもり」「サービス向上の一環」かもしれません。
でも、それが制度違反に該当してしまうと、どれだけ善意でも“アウト”なんです。


なぜデイサービス内での保険マッサージがNGなのか?

訪問マッサージは、医療保険を使った治療です。
一方、デイサービスは、介護保険によって提供されているサービスです。

この2つの制度には、明確なルールと線引きがあります。
特に問題視されているのが、「医療保険と介護保険が“同じ時間帯に”提供されること」

これは、いわば「W請求」にあたる可能性があり、
場合によっては「不正請求」と見なされることもあるんです。

過去には、ある県で返還命令が出た事例もありました。
そのときの理由はこうです:

・デイサービス中にマッサージを受けた
・その時間、デイのサービス内容(食事・入浴・機能訓練)が提供されていないのに請求されていた
・結果的に、介護保険の請求が「過大」と判断された

つまり、あなたがどういう意図で動いたかは関係なく、
制度上の「矛盾」が発生するとアウトになるということです。


「開始前に来てもらえばOK」は通用する?

これもグレーというより、ほぼブラックに近いです。

たとえば:

・デイサービスの「利用時間」が9時開始なのに
・8時30分に来てもらってマッサージを提供

このとき、もし「デイサービス側が送迎を行っていた」「施設の中で提供していた」となると、
形式的にはデイサービスの“利用開始”とみなされる可能性があります。

そして、「施設の中で行っている以上、実質的にはデイ内施術と判断される」こともあるんです。

市町村や保険者によって解釈はまちまちですが、
トラブルになったときに守ってくれる人はいません


他の治療家がやっている「安全な選択肢」とは?

現場では、次のような対応をしている先生が多いです。

● サービスマッサージとして提供する

デイサービス側から「時給契約」でお金をいただき、
マッサージを“介護の一環”として提供する形です。

これは保険を使わず、あくまで施設内サービスとしての提供なので合法です。

● 自宅訪問に切り替える

「ご希望があれば、デイの日ではなくご自宅でマッサージします」と説明し、
しっかり医師の同意書を取り、訪問施術として対応する方法。

これが、最も正攻法でトラブルのない対応です。

● 入所型施設にシフトする

実際、医療保険での施術が認められているのは、
入所系の施設(特養・有料老人ホーム・グループホームなど)が多いです。

そもそも通所施設(デイサービス・デイケア)は医療行為との併用が難しい仕組みなので、
営業ターゲットを見直すのも戦略のひとつです。


では、どう対応するのがベストか?

・制度違反にならないよう慎重に判断する
・市町村や保険者に確認をとる
・デイサービス側とも事前に合意形成する

そして、個人的にはこう伝えるようにしています:

「この施設に通っている方にはぜひ施術して差し上げたいのですが、
保険制度上、デイサービス中の施術はできないことになっているんです。
その代わり、ご自宅での訪問でしたら保険での施術が可能ですので、
必要であればそちらで対応させてください」

誠実に、制度を守って対応すれば、
ケアマネさんや施設の方も理解してくれますし、信頼も高まります。


まとめ

・デイサービス中の保険マッサージは、原則NG
・往療料を取らなくても「施術場所」と「時間」でアウトになる可能性あり
・最悪、返還命令が出るリスクもある
・「サービスマッサージ」か「自宅施術」への切り替えが安全
・曖昧なケースは必ず市町村に確認を!

制度を知らずに「やってしまった」では済まされない時代です。

いま一度、自分の営業スタイルと施術の提供方法が、
制度に沿っているかどうかを確認してみてください。