こんにちは、黒羽です。

訪問鍼灸や訪問マッサージをしていると、こんな質問をされることがあります。

「患者さんが今、ショートステイを利用中なんですけど…そこでもマッサージできますか?」

結論から言えば――

「できます」…が、“自治体しだい”です。

つまり、ショートステイ(短期入所)であっても、本人と家族の同意があり、医師の同意書があり、保険者(市区町村)と施設の許可があれば、施術は可能です。

ただし、これにはひとつ落とし穴があります。

それが――

「ローカルルール」です。

どれだけ厚労省の通知を調べても、どれだけ施術の必要性があっても、

ある自治体では「OK」、別の自治体では「NG」とされる…

そういう市町村ごとの裁量があるのが、現実なんです。

たとえば、東京都でも…

・「ショートステイ内では医療保険は使えない」とする区

・逆に、申請すれば柔軟に認めてくれる区

両方あります。

この「差」が、施術者として一番ややこしいところなんですよね。

じゃあ、どうすればいいのか?

一番の正解はこれです。

▼市役所の保険者(国保課)に、事前に問い合わせること。

具体的には、こんなふうに聞いてみてください。


「歩行困難な方の機能回復、麻痺の軽減を目的とした訪問マッサージを、
医師の同意書のもとでショートステイ施設内で行うことは、
保険請求上問題がありますか?」


この一文だけで十分です。

OKが出れば、あとは患者・家族・医師・施設長の承諾をもらえば施術できます。

そしてもう一つ、意外と知られていないポイントですが…

自宅と施設で施術場所が異なる場合、往療距離はその都度、別々に計算してOKです。

つまり、日によって自宅・施設のどちらに行くかで、請求距離が変わるなら、それぞれ個別に記載できます。

■ただし注意!

どれだけ正当な理由があっても、保険者と揉めてしまっては元も子もありません。

たとえば、ある市町村では「ショートステイ中は介護保険サービス中だから、医療保険はダメ」と断られることもあります。

その場合、「納得できないから突き通す!」ではなく、“一歩引く勇気”も大切です。

なぜなら、一度こじれてしまうと――

・以降の申請が通りづらくなる
・無言の圧力でチェックが厳しくなる
・他の患者さんにも影響する

こういった“地味に痛い”展開になることがあるからです。

なので僕はいつもこう考えています。

「正論より、信頼。制度より、人間関係」

保険者さんと穏便に、長くやっていくために、たとえ理不尽でも“引きどき”を見極める。

これ、実はめちゃくちゃ大事な判断なんです。

ショートステイや特養の施術には可能性があります。

でも同時に、“一歩踏み間違えれば、全体に影響が出る”というリスクもあります。

だからこそ――

・事前確認を必ず行うこと
・自治体ごとの“温度感”を見極めること
・こじれそうなら無理をしないこと

この3つを、ぜひ意識してみてください。

それが、あなたの施術と信頼を守る最大の防御力になります。