こんにちは、黒羽です。
今日は「施術で絶対に守るべきこと」についてお話しします。
テクニック?知識?経験?
もちろんどれも大事なんですが、僕が何よりも大切にしているのは――
「患者さんをこれ以上、悪くさせないこと」です。
これ、当たり前のようでいて、多くの施術者が見落としがちなんですよ。
調子を良くしよう、少しでも動けるようにしてあげようとするあまり、
気づかないうちに「壊してしまう」ことがある。
そしてその“壊れた”とき、一番に疑われるのは施術者です。
どれだけ誠意を込めた施術であっても、
「先生がやったせいで痛くなった」と言われてしまえば――それは事故です。
だから僕は、良くする前に「悪くしない」を最優先にしています。
■ 骨粗鬆症の方に強もみは絶対NGです
たとえ「もっと強く押して!」と言われても、
「丸々さんの骨は今、普通の人よりも弱くなってます。
気持ちよくても危ないので、ここまでにさせてくださいね」と丁寧に説明します。
なぜなら、折れてからでは遅いんです。
しかもその折れた原因が、
「施術中にうつ伏せにさせた状態で押されたから」なんてことになったら…。
それだけで信用を一気に失うだけじゃなく、下手すれば訴訟リスクだってある。
「壊さないためのルール」を自分の中に持っておくことは、
自分の身を守る最も大切な技術なんですよ。
■ 転倒のリスクも徹底的に避ける
移乗動作、歩行訓練、座位からの立ち上がり。
どれも、リハビリとしてはやりたくなる施術です。
でも、ちょっとでもふらつけば転倒の可能性があります。
だからベッド上でできることを中心に。
どうしても必要なら、手すり・杖・押し車・車椅子などをしっかり使って、
「自分の目だけで見る」ではなく「誰かの目がある場所」で行うようにしています。
なぜなら、密室で起きた事故は、
“誰のせい”かの証明ができなくなるからです。
家族やケアマネさん、施設職員の前で施術するのは、
患者さんのためでもあり、自分のためでもあるんです。
■ 心肺機器、呼吸器、ペースメーカーなどには絶対触れない
僕たちが知らない医療機器は、患者さんの体にたくさんついています。
・気管切開してる
・ペースメーカーを入れている
・たんの吸引をしている
・胃瘻のチューブがある
こういうときは、自分で判断せず、必ず確認を取ります。
「無知なまま手を出す」ことこそが、一番危険だからです。
だから、知らない用語が出てきたら恥ずかしがらずに聞きます。
ケアマネさん、看護師さん、ご家族、誰でもいい。
「この患者さんで特に注意すべき点はありますか?」
これを最初に聞くだけで、守れるリスクが格段に変わります。
■ 火を使うお灸、刺す鍼も「信頼関係があってこそ」
火傷や気胸などの事故も、信頼関係がなければ“すべて施術者のせい”にされます。
だから、最初から火を使うお灸や刺す鍼を無理に行わず、
まずは接触鍼、ローラー鍼など、安全性の高い手技を使って距離を詰めます。
そのうえで「この方なら大丈夫」と思えたら、そこから一歩ずつ段階を上げていきます。
これも信頼構築のプロセスなんです。
■ 無理しない。聞く。壊さない。安全を最優先。
僕がいつも考えているのは、次の4つだけです。
・無理なことはしない
・わからないことは聞く
・壊さないことを最優先に
・安全性が確保されている環境で行う
それだけで事故の8割は防げます。
そのうえで、自分ができる最善の施術をする。
患者さんと一緒に、無理のない範囲で回復を目指す。
それが、長く信頼される施術者の在り方だと僕は思っています。
これから訪問施術を始める方、
もう始めているけど不安がある方へ。
「治すこと」より先に、「壊さないこと」をルールとして自分の中に刻んでおいてください。
それだけで、現場での判断も変わってきますし、
クレームや事故のリスクも激減します。
そして、何よりも安心して施術に向き合えるようになります。
ぜひ、参考にしてみてください。