今回は、実際に訪問鍼灸をされている方からいただいた、とてもリアルなご相談について、お答えしていきます。

「鍼灸が嫌い!ローラー鍼もダメ!」その時、どう対応するか?

こういうケース、実はめずらしくないんですよ。

患者さんが高齢であるほど、「鍼は痛そう」「お灸は熱そう」という“イメージ先行”で、やる前から拒否されてしまうことがよくあります。たとえ「刺さない鍼」や「ソフトな刺激」に変えても、「嫌だ」と言われてしまう。

こうなると、いくら技術があっても、“信頼関係”がないと受け入れてもらえません。

なので、このケースで最も大事なのは、「技術を変えること」ではなく、「アプローチを変えること」です。

■なぜ嫌がるのか?=“恐怖”か“過去の経験”かを聞いてみる

まずは、一度冷静に会話してみることが大切です。

「鍼は痛い」「お灸は熱い」というイメージを持ってる人に対して、いきなりやるのはNG。これは強引なセールスと同じです。

まず、こう聞いてみてください。

「以前に鍼やお灸を受けて、嫌な思いをされたことがあるんですか?」

ここで過去のトラウマが出てきたら、それを否定せずにしっかり共感しましょう。

「それは大変でしたね…。私もそういう話、よく聞きます。無理に鍼灸を勧めるつもりはありませんので、安心してくださいね。」

こう言うだけで、ぐっと心のハードルが下がります。

■“治す”より“寄り添う”ことが先

訪問鍼灸は、治療というより「寄り添いの医療」に近いです。

患者さんが“怖い”“不安”と感じているうちは、無理に治そうとしないことが大事です。まずは「心を緩める」ことが、最大の治療になります。

そこで、おすすめはこういう提案です。

「今日は無理に何かすることはしません。ただ、お身体の状態を少し拝見して、お話を伺うだけでもよろしいですか?」

ここで信頼を得たら、「お腹や背中に手を当てるだけ」の手当てでも構いません。

もしくは、軽いマッサージでもいいでしょう。少しでも「この先生は安心できる」という印象が残れば、次につながります。

■“選択肢”を提示して、主導権を患者さんに渡す

何が嫌で、何ならOKか?

その境界線を探るために、こんなふうに“選ばせてあげる”のも効果的です。

「鍼もお灸も無理な場合、たとえば手で軽くさするだけでもお試しいただけますよ。もちろん、それも嫌でしたら、無理には勧めません。」

こう言われると、患者さんは「選んだのは自分」と思えるので、納得感が高くなります。

■最初の施術は“ゼロ点”でもいい

大事なのは「次回も来てもらえるかどうか」。

たとえば、最初は何も施術せずに雑談だけして帰る。それでも、患者さんとの距離が縮まっていれば、十分“0点ではない”んです。

「この人なら話しても大丈夫」

「嫌なことはされなさそう」

この“感覚”こそが、リピートの土台になります。

無理に成果を出そうとせず、“居心地の良い施術者”として残ることを意識しましょう。


まとめ

・「嫌だ」は、技術の問題ではなく“信頼関係の問題”

・いったん過去の経験を聞き、共感して安心させる

・治療よりも“寄り添い”を意識し、選択肢を与える

・初回施術は0点でもOK。大事なのは「また来たい」と思ってもらうこと

・「無理やりやらない人だ」と思われた時点で、次につながる

患者さんの「嫌だ」は、あなたを拒絶しているわけではありません。

“恐怖心”という壁を越えるには、時間と信頼が必要です。

あせらず、目の前の人の声に、ただ耳を傾けてみてくださいね。