こんにちは、黒羽です。
時々、こんな言葉をケアマネさんやご家族から聞くことがあります。
「訪問マッサージは結構です。うちはPTさんがマッサージしてくれてるんで」
こう言われて、「ああそうですか」とそのまま引き下がってしまっていませんか?
でも、ちょっと待ってください。それ、本当に“マッサージ”でしょうか?
実はここ、大きな勘違いが起こりやすいポイントなんです。
訪問マッサージと訪問リハビリは、まったくの別物です。
名前や見た目が似ているからこそ、「なんとなく同じようなもの」と思われがちなんですが、
資格も、目的も、使える保険制度も、そもそも根本から違います。
理学療法士(PT)は、国家資格のもと「動作訓練のプロ」として、歩行や立ち上がりなどの日常生活動作の改善(ADLの向上)を目指して介入します。対象は「動く力」を取り戻すことにフォーカスされます。
一方、私たちあん摩マッサージ指圧師は、筋肉の緊張緩和、関節の可動域改善、血流促進など、身体状態そのもののコンディション調整に特化しています。いわば、「動くための体づくり」を支える専門家なんですね。
だから、PTさんがどれだけ優れたリハビリをしても、筋緊張が高い、関節が固まってる、血流が悪い…という状態では本来のパフォーマンスが出せません。
訪問マッサージは、その「土台づくり」を担う存在なんです。
「PTさんもマッサージしてくれてるから大丈夫」は危険な思い込み
実際に、PTさんが少し手で触れて筋肉をほぐすような動きは見られるかもしれません。
でも、それは“マッサージ”として行っているわけではないんです。
PTさんの業務範囲は、医師の指示に基づく訓練であり、「慰安」や「マッサージ」を目的とした施術は法律上できません。
訪問マッサージとして医療保険で施術できるのは、「あん摩マッサージ指圧師」という国家資格を持った施術者だけ。ここは法的にもはっきり分かれているところです。
保険の仕組みもこんなに違う
・訪問リハビリ(PT等)
→ 医療保険 or 介護保険
→ 医師の「指示書」で利用
→ 医療機関や訪問看護ステーションを通じて利用されることが多い
・訪問マッサージ(あん摩マッサージ指圧師)
→ 医療保険のみ
→ 医師の「同意書」が必須
→ ケアマネやご家族と直接相談し、施術者が同意書を取得して訪問
「じゃあ併用はできないの?」という誤解
答えはNO。
介護保険と医療保険の併用は制度上しっかり認められています。
つまり、訪問リハビリを受けながら訪問マッサージを併用することは可能なんです。
むしろ、筋肉の緊張や関節拘縮が強い患者さんには、マッサージで体を整えた上でリハビリに移るほうが効果的です。
ケアマネさんやご家族にこう伝えられます。
「リハビリは“動けるようにする訓練”、マッサージは“その前段階の身体調整”。この2つをうまく組み合わせることで、より早く機能回復を目指せますよ」と。
訪問マッサージの役割は、“ケアプランを邪魔しない”ことにもある
訪問マッサージは介護保険を使いません。つまり、ケアプランの枠を圧迫しないという強みがあります。
ケアマネさんの頭の中には常に「枠」という概念があります。その中でいかに効率よくサービスを配置するかが仕事です。
だからこそ、介護保険を使わずに、リハビリの前段階を補える訪問マッサージは、保管的な役割として非常に重宝されるのです。
黒羽からのアドバイス
「PTさんがやってるから、うちは大丈夫」
こう言われたときに、ただ引き下がるのではなく、一歩踏み込んで「違い」を伝えられるかどうかが紹介の数と信頼度を大きく分ける分岐点になります。
「じゃあ具体的にどう違うの?」と聞かれたときに、すぐに答えられるよう、以下のフレーズを覚えておくと便利です。
【覚えておきたい伝え方の例】
・「訪問リハビリは“動作の訓練”、訪問マッサージは“そのための体づくり”です」
・「マッサージは医療保険を使って、リハビリとは別軸で提供できるサービスです」
・「ケアプランの枠を使わないので、併用してもケアマネさんにとっても負担はかかりません」
・「一緒に使うことで、患者さんの機能回復をより早める効果が期待できます」
間違っても、「じゃあもういいです」とあきらめないでください。
“理解のギャップ”を埋めることが、あなたの仕事です。
「知らないから使わない」ではなく、「知ってもらったからお願いされた」
そんな未来を、あなた自身がつくっていくことができます。
その一歩として、まずは“自分がしっかり違いを理解し、言語化できること”が第一歩です。
ぜひこの内容を、ご自身のトークや資料、ニュースレターにも活かしてみてください。