最近、「柔道整復師ですが、訪問マッサージのような形で往診専門の施術がしたいです」というご相談をよくいただきます。
結論からお伝えすると――
柔道整復師でも訪問施術(往療)は可能ですが、
条件がかなり厳しく、訪問マッサージと同じスタイルで開業・集客するのは現実的に難しいというのが正直なところです。
では、具体的に何ができて、何ができないのか?
そして、どうすれば制度の中で“最大限できること”ができるのか?
詳しく解説します。
柔道整復師の「訪問施術」で知っておくべき制度の3つの原則
① 柔整の保険対象は“急性疾患”のみ
・骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷
・慢性疾患(脳梗塞後遺症や変形性関節症など)は保険対象外
つまり、寝たきり高齢者への慢性疾患への施術は、柔整では保険適用になりません。
訪問マッサージと同じスタイルで、
要介護者に「保険で施術します」とは言えないのです。
② 原則として「施術所」を構えていないと、開業不可
柔整の制度上、「施術所の届出がない場合、保険請求はできない」ことになっています。
つまり、“往診専門で院なし開業”というスタイルは、法律的にはアウトなんです。
③ 往療(訪問)できるのは、通院困難な患者のみ
往療ができる条件は、
「歩行困難や体動困難など、通院ができないと判断された患者」に限られています。
これも同意書などの裏付けが必要で、
なおかつ医師の判断が必要になるケースが多いです。
では柔整師が“現実的にできる方法”は?
もしあなたが柔整師で、施術経験もあり、
「訪問のニーズを感じている」なら、以下の3つの選択肢があります。
①【整骨院を開設し、往療する】
→ 最も制度に則った王道スタイル。
施術所を開設した上で「通院困難な患者に限って往療する」なら可能です。
ただし、対象疾患は急性の外傷に限るため、
マッサージのように慢性疾患を長期的にケアする訪問スタイルとは性質が異なります。
②【鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得し、訪問専門に転向する】
→ もし「訪問マッサージのような形をメインにやりたい」ということであれば、
鍼灸orあマ指の資格を取得することが最も確実で自由度の高い方法です。
・慢性疾患OK
・寝たきり、歩行困難者OK
・保険適用OK(医師の同意書あり)
・訪問専門開業も可能
現場では、柔整+鍼灸など複数資格を持っている施術者も増えています。
③【完全自費で、訪問ボディケア・機能訓練を行う】
→ 保険適用を外し、完全自費で出張施術・機能訓練・コンディショニングを行う方法です。
法的に「柔整師としての施術行為」はできませんが、
資格を持った“健康サポート”として
・リハビリ補助
・歩行訓練
・筋力低下予防
・関節可動域訓練
など、メニューを工夫すれば“訪問ビジネス”として成り立ちます。
柔整師が訪問に取り組むときの注意点
・医療保険のルールを超えての施術はNG
・ケアマネに営業しても紹介が難しい(保険対象疾患が違うため)
・患者も「マッサージが受けられる」と勘違いする可能性がある
つまり、“マッサージのふりをした柔整訪問”は制度的にも危険です。
一方で、制度の中でやるべきことをやれば、
現場での信頼は得られますし、将来的な資格追加で選択肢も広がります。
まとめ
・柔道整復師でも訪問施術は可能だが、保険適用には条件がある
・慢性疾患や寝たきりの高齢者への施術は原則できない
・施術所なしの往診専門スタイルは制度上できない
・資格を追加取得することで、自由度が大きく広がる
・完全自費での訪問ケア型ビジネスという選択肢もあり
あなたが「本気で訪問に取り組みたい」なら、道はあります。
ただし、それは制度のルールを理解し、
正しい形で踏み出すことが前提です。
マッサージと柔整は、似て非なる世界。
だからこそ、今後の選択と方向性を、制度と現実の両面から見直すことが大切です。