こんにちは、黒羽です。
今回は、ちょっとゾッとするけれど、施術者として知っておかないと危ない【示談】のお話です。
「示談」って聞くと、どこか他人事のように感じるかもしれません。
でも、これ、実は身近な“トラブル処理の最終手段”なんです。
そして、ここで間違った判断をすると――
「解決したと思ってたのに、あとからまた請求が来た…」
「最初に言ったことと違うと責められて、信用を失った…」
そんな事態に発展してしまうこともあるんですね。
ではなぜ、そういうことが起きるのか?
それは、「思い違い」や「説明不足」からくる“錯誤”という問題が絡んでいるからです。
「示談」はゴールじゃない。油断すると“再スタート”が切られてしまう。
施術後の事故やトラブルが発生したとき、
患者さん側と話し合いをして「示談書」を交わすことがあります。
「これで一件落着!」と思うかもしれません。
でもその示談、本当に“最後まで納得”されていましたか?
もしそこに、「誤解」があったと後から主張されたらどうなるか。
たとえば…
・診断書の内容に見落としがあった
・早とちりで軽傷だと思って示談したが、後から骨折が判明した
・そもそも示談書に「これで全て終了します」と書いてなかった
こういう場合、「示談は無効だ!」と再び損害賠償を求められることがあります。
民事トラブルでは「錯誤(=思い違い)」が大きな争点になりやすく、
法律上は“錯誤があったら合意は成立していない”と見なされることもあるんですね。
「間違っていないのに責められる」その正体が“錯誤”
この“錯誤”という言葉、日常の現場でも起こりうるトラブルの本質です。
例えばこんなこと、ありませんか?
・回数券を買った患者さんが「返金できると思ってた」と言い出した
・「院長が担当する」と伝えた施術で、ほとんどをスタッフが行いクレームに
・説明したつもりが「聞いてない」と言われた
あなたの施術や対応に落ち度はなくても、
相手の“思っていたこと”と“実際に起こったこと”がズレていれば、それは錯誤とされてしまいます。
そして、錯誤を根拠に「示談のやり直し」を求められると…
たとえ誠実に対応していても、結果として裁判や再交渉に巻き込まれる可能性が出てきます。
「しっかり説明しても、理解してもらえないことがある」
ここで大切なのは、「説明したつもり」ではダメだということ。
説明しても、患者さんがちゃんと理解しているかどうかは別問題なんです。
たとえば、
・パンフレットに記載があるから大丈夫
・口頭で説明したから十分
・同意書にサインをもらったからOK
…本当にそうでしょうか?
その説明を、患者さんの目線で、納得できる形に落とし込んでいましたか?
施術の内容、料金の条件、リスクの説明…
少しでも「あれ? 聞いてない」と言われれば、それは“錯誤”を生みます。
【実例】早すぎた示談が、後から施術者を追い詰めた話
これは実際にあった事例です。
ある患者さんが施術後に胸の痛みを訴え、整形外科で「打撲」と診断されました。
軽症だと思い、施術者は誠意を持ってすぐに示談対応をしました。
しかし…その後痛みが引かず、別の病院で再検査したところ“骨折”が判明。
結果として、患者さんは「示談は間違いだった」と主張し、再度損害賠償を請求。
施術者は、「もう解決したと思っていたのに…」と大きなショックを受けたそうです。
じゃあどうすればいいのか?
答えはシンプルです。
「言った・言わない」にならないよう、記録と確認をしっかり残すこと。
そして、万が一のトラブルが起きても大丈夫なように、
・事前説明を紙でも行う
・同意書に「内容を理解した上で署名した」旨を明記する
・示談書には「今後の追加請求は一切しない」とはっきり書いておく
これらを徹底しておくことが、あなたの身を守ってくれます。
最後に、あなたへ。
施術は「信頼」で成り立つ仕事です。
でも、どれだけ信頼関係を築いていても、「あの時は納得してなかった」と言われれば一瞬で崩れます。
あなたの誠実さが、言葉や紙にして伝えられていないことで失われてしまう。
それは、あまりにももったいないことだと思いませんか?
だからこそ、今一度あなたの「説明の仕方」「記録の残し方」を見直してみてください。
“事故を防ぐ”だけじゃなく、“信頼を守る”ための武器を持ちましょう。
それが、これからの時代を生き残る施術者に必要なスタンスです。